認知バイアスといえば行動経済学や統計の分野で人間の行動や認識に大きな影響を与えるものということで、よく目にすることが多くなっています。
そういったバイアスの事例を行動経済学、統計学、情報学の分野ごとに挙げて解説をしています。
なお、本書は「行動経済学・統計学・情報学編」としていますが、他の分野でもこういった解説書を発行しているかどうかは明記されていませんでした。
バイアスの例としては有名なところでは「サンクコスト」「フレーミング効果」「生存者バイアス」「グーグル効果」などでしょうか。
こういったものは聞いたこともありましたが、初耳というものもありました。
「ハウスマネー効果」というのは言葉は初めてですが、内容はよくあるものでした。
意味としては「不労所得や臨時収入は自分で稼いだ収入と比べて支出されやすいこと」
そして「ハウス」とは家と言った意味ではなく、「カジノ」を指すのだそうです。
これも実験を行ってはいるのですが、これはかなりやりにくいもののようです。
実際にカジノに行ってもらい賭けをしてもらうのですが、勝てば良いのですが負けた場合が困るとか。
もちろんこういった効果はギャンブルだけでなく遺産相続などの不労所得や、毎月の収入が一定しない職業の場合も関わってくるようです。
統計的バイアスの例として「3Dグラフの誤用」というのは、言われてみれば確かにあるということに気づかされる(そして自分でもやるかも)ことでした。
グラフで表すことの多いのに、円グラフによる構成比の例示というものがあります。
しかしかつての手書きの時代ならばコンパスで円を描いて線を引く程度だったのですが、現代ではコンピュータアプリでさっと描くことができます。
ところがその中に「3Dグラフ化」と言う機能があり、その方が見栄えが良いので使うことが多いようです。
平面の円グラフを少し厚味を付ける立体化をすると、円グラフの手前側の項目が大きく感じるのです。
それで実際の構成比とは違うイメージを与えてしまう恐れがあります。
棒グラフでも棒を立体化し四角柱とするような手法がありますが、これをすると数値を誤認させたり、遠近法を用いて錯覚させるようなこともあるようです。
グラフに過度のデザインをくわえるべきではないのかもしれません。
「ウーズル効果」というのは聞いたことがありませんでした。
ウーズルとは「クマのプーさん」に出てくる架空の動物の名前です。
プーさんがウーズルという動物のことを聞き、本当はいないのに過度に恐れてしまい右往左往するという話が作られました。
そのように、「事実ではないことでも頻繁に世間で引用されることで事実と誤認されるようになること」をウーズル効果と言います。
こういった例は最近のようにネットで怪しい情報が頻繁に流れるようになると多く見られています。
根も葉もないうわさに過ぎないことが、いったん拡散して炎上してしまうとそれが事実かのように思われてしまうといったことをよく耳にします。
そしてこれに加担するということが誰にでも起き得るということも気を付けなければならないことです。
本書では1項目あたり4ページの記載であり、詳しく知るためにはさらに他書を参照する必要があるのでしょうが、一通りの知識を得るには手ごろな本かと思います。