ちょっと衝撃的な題名ですが、どこにでも見られるような現象を扱っています。
著者の北野さんは人事関係や就活についてのコンサルタントをされているようですが、そういった組織内での人間関係ということについて様々なものを見てきました。
その中で一番腹立たしいのが、「誰かが新しいことにチャレンジしようとするときに邪魔をしたり足を引っ張ったりすること」だそうです。
そして、その「新しいことにチャレンジする」人というのはその点については天才であり、足を引っ張る連中が凡人だと言います。
このような捉え方をしていくと、人間というものは三種に分かれます。
天才と凡人、そして秀才です。
大多数は凡人、少しだけ秀才がいて、天才はごくわずか。
その才能を一言で言うと、天才は「独創性」、秀才は「再現性」、凡人は「共感性」です。
もちろんこれは事象を極めて単純な形に切り取ったものであり、実際にははるかに複雑なのでしょうが。
そしてこの本ではそのような天才と秀才、そして凡人たちの人間関係をとある会社の権力闘争として描いたストーリーで分かりやすく説明しています。
なにしろ、その説明役が渋谷のハチ公だというのですから。
まあ、真の凡人でも理解できるように書かれているとも言えます。
このような人間関係というものは多くの組織、会社や学校などで常に存在し、そこで多くの天才が「殺される」もちろん死ぬわけではなくても才能を発揮することを邪魔されて葬られるということです。
そしてそれは企業で言えばスタートアップの伸びる段階では天才的リーダーが引っ張りぐんぐんと成長していくのが、徐々に大企業化していくとともに秀才型の組織運営に長けた人間が多くなり、天才型リーダーはその能力を発揮できなくなる「大企業病」に陥るということです。
なお、この本ではそのような天才、秀才、凡人の描写をハチ公の化身が手を変え品を変えて説明しています。
例えば説明の仕方でも、
主語を人メインで語る凡人。
主語を組織やルールなどの善悪で語る秀才。
主語を世界や真理など超越した何かで語る天才。
といった具合です。
こういった天才型リーダーから秀才へのバトンタッチは日本の企業でも高度成長期から低成長期に起こっているとしています。
そしてそのやり方で組織の運命が変わるとも。
今はほとんどの大企業が改革ができないことに苦しみ、天才はそこから抜け出して起業を始めたそうです。
どうもあまりにも分かりやすいように説明されていますが、そこまで単純化はできないんじゃないのと思います。まあそれほど厳密な論証をするわけでもなく、広くこの考えを知らせたいということでしょうから、目くじらを立てるほどでもないのかもしれませんが。