大阪の小学校で異臭がするということで大きな騒ぎとなったようです。
まあ体調を悪くした子どもたちを悪く言うつもりなどは毛頭ありませんが、やはりこういった異臭のようなものに対する抵抗力が落ちているのでしょうか。
昔はあちこちにひどい悪臭の場所がありましたが、今ではどこも無臭が当たり前のようになっています。
時々こういった騒ぎが起こりますが、多くは原因も分からないままうやむやということになります。
よく出てくる言葉が「ガスの臭い」とか「卵の腐った臭い(本当に卵の腐ったところの臭いをかぎ分けられる人はほとんどいないと思いますが)」、「イオウの臭い」等々ですが、そもそも「ガスの臭い」というものは人為的に付けられたもので、多くは「メルカプタン」という物質の臭いです。
メルカプタンとは色々な物質の総称で、メチルメルカプタンが代表的なものですが、その構造はCH3-SHという非常に簡単なものです。
しかしその「タマネギの腐ったようなにおい」が特徴的であり、ごく微量でも誰でも感じやすいためにガス漏れを検知しやすくする目的で使われています。
「イオウの臭い」というのはおそらく温泉や火山噴火口などでの臭いが記憶にあるのでしょうが、イオウそのものではなくイオウを含む化合物の臭いでしょう。
理科系の実験系分野では多くの化学物質を扱うこともあり、色々な臭い(たいてい悪臭)にはかなり慣らされてしまいます。
「いい匂い」の物質もエステル類などありますが、それでもその物質が多量にあればその臭いは気持ち悪くなるものです。
私も生物・化学の研究室に長く勤めていたため、そういった臭いには否応なしにさらされ続けてきました。
有機溶媒も大量に扱いますし、試薬類でもほんのわずかでもひどい臭いのものが数々ありました。
特に有機酸類、高級アルコール(別に高価なものという意味ではありません。分子量が大きいアルコール類ということです)類などではごく微量でも分かるものがありました。
また、微生物の作り出す臭いというものもひどいもので、大腸菌などの細菌群は悪臭としか言えないものでしたし、カビの作るカビ臭、放線菌の作る土壌臭も特有でした。
黄色ブドウ球菌という細菌は「長く履いた靴下のようなにおい」なのですが、これは人間の足にも多く生息している菌だからという理由です。
その培養後の培地を殺菌して捨てるところがまた悪臭の塊のようなもので、辟易するようなものでした。
まあ簡単なことではないのですが、悪臭騒ぎといえばなんでも「ガスの臭い」ではなくもう少し物質を絞れれば原因特定にもつながるのではないかと思います。