爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「面白くて眠れなくなる元素」左巻健男著

PHPエディターズ・グループより出版されている「面白くて眠れなくなる」シリーズは相当数になりますが、左巻さんはその幾つかを担当されているようです。

 

これは、「元素」それぞれについて幾つかのエピソードを書いていくというもので、まあ「眠れなくなる」ほどではありませんでした。

 

化学物質なんていうと何か怖ろしいもののように感じる人もいるかもしれませんが、動植物や天然物など含めてもすべては元素からできています。

その一つ一つの元素について、語っているのですが、長いものでも水素で9ページ、短いものはウラン以降の人工元素で1行(114 Fl フレロビウム 人工元素 と言った調子)

よく知っている元素では物足りず、知らない元素はどうでも良い?、程度の記述といったところでしょうか。

 

それでも数々のエピソードの中には今まで知らなかったこともいくつかありました。

 

フッ素Fは酸化作用が強く猛毒ですが、これは「電気陰性度」が最大であるからだそうです。

ほぼすべての元素を酸化してフッ化物を作り、希ガスのキセノンやクリプトンとも化合物を作るそうです。

そのため、初期にフッ素について研究を始めた科学者たちは中毒にかかり死亡してしまいました。イタリアのボルタやアイルランドのクノックス兄弟も中毒になったそうです。

 

硫黄Sはいろいろな植物などにも含まれ、独特の臭いの元にもなっていますが、実は硫黄自体は無臭です。よく、温泉などで「硫黄の臭がする」というのは硫化水素の臭いです。

また、硫化水素の臭いを「卵の腐ったような臭い」と表現しますが、「卵の腐ったところ」を実際に見た人がどれだけ居るでしょうか。

著者はこれは「固茹で卵の臭い」と表現すべきとしています。ごもっとも。

 

鉄Feは言うまでもなく広く使われていますが、不純物が通常は0.1%以上含まれています。

これを純度99.999%以上にまで精製するということが、1999年に東北大学の安彦さんにより成功しました。

この超高純度鉄は希塩酸にはほとんど溶けません。酸への耐食性が10倍以上高くなるようです。

また、一般の鉄より可塑性が高くなり、この可塑性は液体ヘリウム温度でも失われないそうです。

 

まあ、こういった本で化学を好きになる人が増えれば良いけど、元々好きな人じゃなきゃ読まないかな。

 

面白くて眠れなくなる元素

面白くて眠れなくなる元素