爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「消えた戦法の謎」勝又清和著

今は藤井聡太六冠の大活躍で人気の出ている将棋界ですが、かつてもその時々で活躍していた棋士のために沸いたこともありました。

この本は1995年、羽生さんが大活躍していた当時のものです。

著者はその頃プロ棋士になったばかりの勝又四段(現在も棋士を続けており今は七段だそうです)

そしてその主題が「消えた戦法の謎」というものです。

 

将棋には多くの戦法がありますが、「居飛車系」「振り飛車系」といっても細かく見ればその中には多くの戦法があります。

戦法の採用には流行があり、棋士は常に多くの検討を重ねて勝率の高くなるようなものを探し出し、それらに工夫を加えて実戦で使ってみるということを繰り返しています。

それが上手く行くと連勝できるということもたまにはあるようで、他の棋士たちも勝率が良い戦法を使ってみるということがあります。(別に特許もないようで、誰が何をやっても自由であり、開発者に許可を受けるということも不要です)

そういった戦法がずっと勝率が良いままであればだれもが採用することになるのでしょうが、そうはいかず、たいていはその戦法の対抗策が考え出されることになります。

 

そして、その対抗策の方が完全に有効ということになるとその戦法自体、もう誰も使ってみようという気にはならなくなります。

それが「消えた戦法」ということです。

 

本書出版当時は現在とは少し戦法の傾向も違っていたようですが、この本に書かれている戦法はその頃流行っていたものの少し前に広く使われており、その対抗策が出回って使われなくなったものです。

矢倉では「森下システム」「米長流急戦矢倉」

振り飛車では「ツノ銀中飛車」「升田式石田流」

角替わりでは「早繰銀」「棒銀

相掛りでは「塚田スペシャル」「中原流相掛」などが解説されています。

棋士の名前が付けられている戦法はその人が編み出して一世風靡したもので、懐かしいのですがその後は完全に打ち破られる対抗策が広く知られてもう使う人もいなくなってしまいました。

 

ただし、こういった「忘れられた戦法」でもごくわずかな手直しでまた使えるということもよくあるようで、どんどんと事情は変わっていくということでしょう。

 

なお、本書は戦法とそれの対抗策の紹介はされているものの、詳しい解説まではされておらず、実際の棋譜が何十手も書いてあるだけでそれを読み取るのは相当な将棋の腕前のある人でなければ難しいものと思います。

マチュアでもかなりの実力者でなければあまり理解できないものかもしれません。