著者の井上さんは子どものの頃から海外在住、その後も世界的に活躍し英語教育、コミュニケーション力向上の取り組みなどをしてきたそうです。
その井上さんが驚くのがAIを駆使した機械翻訳の技術向上で、もはやかなりの程度までは自動翻訳が実用化されていると感じるそうです。
しかし、どうやら日本人の日本語というものは極めて翻訳しづらいもののようで、これには「あまりはっきりと断定しない」とか「曖昧な表現を好む」「以心伝心を信じる」といった日本人の性格から来るもののようです。
せっかくのAI翻訳でもこのような話し方をしてしまっていれば正確な翻訳はできなくなります。
そこで、この本では「AI翻訳に向いた”日本語”の話し方」を取り上げ、その翻訳で正確に自分の意思を伝えるにはどうすれば良いかを披露しようということです。
なお、非常に分かりやすいのが「自分の日本語文章が分かりやすいかどうかを判定する」方法であり、それは「日本語文章を外国語に翻訳」してさらに「その外国語文章を日本語に翻訳」することです。
今の自動翻訳はこの操作が一発でできますので簡単な操作で可能ですが、それをした時に元の日本語文章とは似ても似つかぬものになる場合が多く、それはもともとの日本語文章が訳しづらいものだったということになるわけです。
これを実施し、元通りの日本語に戻れば外国語に翻訳しても意味の食い違いが無く分かりやすく通じやすいものになっているということです。
通じやすい文章にするための注意はさすがに的確に指摘されます。
「必ず主語を置く」「目的語をちゃんと書く」「一文を短く」「結論を先に言う」「能動態で書く」「文末までちゃんと書く」
といった注意点はまさに日本語の曖昧さから陥りやすい点でしょう。
ちょっと盲点になりやすいのが「擬態語やカタカナ用語に注意する」ということで、これは外国語にはなりにくいものでしょう。
文章の問題以外に、外国語会話をしようとする日本人にとって心理的な姿勢というものにも注意が必要ということです。
それはまず「意見を表現する」、当たり前のようですがこれがなかなかできにくいものでしょう。
さらに「依頼する」「要求する」というのも日本人にとっては不慣れなものかもしれません。
「共感を示す」というのも少し大げさなほどにやった方が良いようです。
なお、著者の実感かもしれませんが、アメリカ人は「意思や可能性」を発信することが上手で、「仕事を100%やれる自信がなくても”自分はその仕事ができる”という傾向がある」そうですが、これは実際には「アメリカ人の男性」によく見られることで、「アメリカ人の女性」にはその性格が弱いそうです。
その点では「アメリカ人の女性」は「日本人」に近い感覚を持っているようだという観察です。
日本人のビジネス用語?として非常に頻繁に出現するのが「すみません」と「お疲れ様」だそうです。
まあ誰でも思い当たることが多いでしょう。
これは自動翻訳でもそれぞれの場面にピッタリという言葉が出ることは無理です。
そのために、これらの場合の使える英語表現を知っておくのは役に立つことだそうです。
「すみません」ではなく感謝の気持ちをはっきりと伝えること、「お疲れ様」ではなく、きちんと挨拶したり、相手を気遣う言い方をしたり、場合によって言葉を変えることが必要なようです。
AI翻訳というのは相当便利になっているようですが、それを使う前に日本語の段階で考えておくことがたくさんありそうです。