この本の題名(和訳)からは地球の環境破壊や資源枯渇などで人類の生存が難しくなる事態に対しての記述かと思いましたが、中身はかなり違います。
はっきりと記述しているように、著者のリースさんはかなり「テクノロジーに対して楽観的」であり、人類生存の困難さなどは技術開発により乗り越えられるという信念があるようです。
本書の原題は「On the Future, Prospects for Humanitiy」というもので、「将来について、人類の展望」とでも言うところでしょうが、どうも邦題は現在の環境危機に合わせて無理に作った?ものに見えます。
それに騙されて買ってしまう人もいるのかもしれません。
まあ、私は図書館で借りて読んでいるので実害はありませんが。
「テクノロジー楽観主義」というだけでもう本を閉じても良かったのですが、何とか最後まで読んでしまいました。
せっかくですから、少しだけ書いておきましょう。
もしかしたら、また数年経ってからすべて忘れてもう一度図書館で手に取ってしまうかもしれませんし。
著者のリース氏は天文学の中でも宇宙物理学の権威ということで、イギリスではかなり重要な職であると思われる、英国王室天文官でもあるということです。
だからと言って、その書いていることが皆妥当であるというわけではないようですが。
しかし、宇宙物理学の範囲に止まらず、AIやインターネット、バイオテクノロジー、エネルギー問題まで果敢に取り組み記述していますが、とにかく楽観主義の基盤が見え隠れ、「そんな認識で大丈夫なの」と心配になります。
挙句の果ては宇宙への進出や移住も可能かのようなことまで書いてあり、科学万能の幸せな時代を生きてきた人なんだと納得させられるほどです。
一つだけ、かつての大科学者について全く知らなかったエピソードが記されていました。
17世紀のイギリスの科学者、ロバート・ボイルは現在では「ボイルの法則」に名を残していますが、彼が亡くなった後にその残したメモに「人類のためになりそうな発明が列挙されたリスト」が書かれていたそうです。
その内容が次の通り。
寿命の延び。
若さの回復。
飛行術。
水中にいつまでもいられる技術。
発作時のてんかん患者やヒステリー患者に見られる身体の強さ。
作物生産の加速化。
放物レンズや双曲レンズの作成。
経度を知るための実用的な方法。
想像・覚醒・記憶などの機能を高める効能を持った薬。
永続する光。
鉱物や動物、植物の種の改変。
膨大な次元の獲得。
すでに果たされたものもあり、無理そうなものもありますが、17世紀の思考としてはやはり並外れたものだったのでしょう。