天文学者ですが、書評家としても知られる海部さんが、特に科学関係の本の書評をまとめたものです。
特に生命科学、地球科学、宇宙物理学といった分野の名著が対象となっています。
新しい本が多いようですが、中には古典的な名著、江戸時代の耳嚢や北越雪譜、寺田寅彦全集、アインシュタインの日本訪問録なども入っています。
名著ばかりのようなんですが、特に生命や進化についての書籍で私が読んだ本というものがほとんど無いというのもがっかりです。
特に化石関係の本もいくつか読まれていますが、そちらの方面にはあまり食指が動かないようで、これまで縁がないままだったのでしょう。
その中では、アダム・ラザフォードの「ゲノムが語る人類全史」という本は私も読んだものでした。
本書でのその書評はあまり海部さんの主張の部分は無いようですが、取り上げた部分も私とは少し違いがあるというのは面白いところかもしれません。
なお、現代の人類のほぼすべてで3000年から4000年前にさかのぼると共通の祖先が居るということは海部さんも取り上げて「現代人はみんな親族だ。そう考えればなかなか愉快」と書かれています。
ここを「愉快」とは思えないのが私の性格の難点なのでしょう。
スティーブン・ワインバーグの「科学の発見」という本はなかなかの名著のようです。
ノーベル物理学賞受賞者のワインバーグが、古代から17世紀の科学革命までの歴史を「近代科学の発見」をキーワードに見直してみたというものだそうです。
ただし、内容の優れた点は間違いないものの、邦題や書籍カバーにはかなり問題があったようです。
邦題の「科学の発見」はやはり間違いと言わざるを得ないもので、「近代科学の発見」と訳すべきでした。
また、カバーに「化学、生物学などは二等の科学」と書かれているのですが、中身にはそのような記述は全くありません。
海部さんは「出版社の売らんかなの宣伝文ではあろうが、原著者を侮辱し、かがくそのものもゆがめる行き過ぎである」と強く非難しています。
火山活動や地震についての書籍は、私もかなり読んだ本が含まれていました。
廣瀬隆さんの「できたての地球」という本も、私もかなり衝撃を受けるほどに感動した本でしたが、海部さんの書評も好意的で「著者が所長を務める東京工大の地球生命研究所は、(中略)鋭い問題意識で研究を進める異色の研究所で、本書はその紹介でもある。新しい分野と新しい研究の息吹に触れるのがまた楽しい」とべた褒めとも言える書き方であるのは嬉しいものです。
それにしても、私もかなりの数の本を読み読書記録を書いているのですが、なぜ「名著」が少ないのでしょう。
よほど選び方が下手なんでしょうか。