ウクライナ紛争はアメリカ側の報道ではロシアの一方的な侵略かのように報じられていますが、ロシア側にも事情はあるといったことはよく言われており、この本もそういった視角から書かれているものかと思いました。
ロシアをそこまで追い込んだのはアメリカの謀略であり、この構造はかつての大日本帝国の中国侵略から太平洋戦争に至ったものとそっくりだというのがこの本の概略です。
ただし、ウクライナ紛争に関わる部分は冒頭の一部のみであり、それ以降は太平洋戦争周辺の記述ばかりです。
これはなぜかと思ったら最後のところにその仕掛けが正直に書かれていました。
「本書は2015年に某出版社から刊行した本を改題し加筆をしたものです」
つまり、本題は後半大部分の太平洋戦争を仕掛けたのはアメリカだというところであり、ウクライナ云々はちょうど起きた紛争の構造がそっくりだということを使って、冒頭部分に加筆しておいて読者を釣ろうというものだったようです。
それに誤魔化されて買ってしまった人もいるのでしょうか。まあ私は図書館で借りたので経済的損失はありませんが。
さて、冒頭部分のウクライナ紛争については日本ではアメリカ側の報道しか聞こえてこず、プーチンだけが悪魔といったものですが、実際にはウクライナ側にも相当な行為がありそれをウクライナのロシア系住民が耐えられずにプーチンが介入せざるを得なくなったという話は他にもいくつか聞こえてきます。
アメリカの報道の謀略というのはこればかりでなく今までにも多くの事例があり、ありそうな話とも言えますが、ただしロシア側にも世論操作の秘密組織がありネットなどを通じて民間人を装った情報を数多く流しているという噂もあり、どちらが正しいのか、あるいはどちらも悪なのか、まあどちらも悪と言う方が真実に近いのかもしれません。
本書著者は完全にロシア側の情報を正と考えており、微塵も疑うことがありません。
それは、かつての太平洋戦争に至る情勢はすべてアメリカ側の謀略だということを信じているからであり、今回もまたそれを繰り返しているという判断だからです。
まあ個人がどのような信念を持ち行動して言っても自由なのですが、本書著者の馬淵氏は外務省に勤務し大使も務めたということで、2005年からはウクライナ駐在の大使も経験しています。
だからこそ本書の内容も真実味があるのかとも思ったのですがどうでしょう。
こういった内容の信念というものはかなり前から持っていたはずですから、その状態で大使も務めていたのでしょうが、大丈夫なんでしょうか。
今は退任し著述業ということです。
内容はまああまり触れませんが、アメリカには「国際主義派」という人々が居り、それがグローバル経済をも追及している国際金融資本と結びつき活動しているということです。
彼らは一見正反対のような共産主義、社会主義とも結びつき、ソ連の勢力伸長にも協力したのが日中戦争、日米戦争の真因であり、日本を戦争に向けさせたのもその勢力だということです。
彼らはアメリカ大統領の側近として働き、大統領を意のままに操ったそうですが。
まあかなり毒気に当てられました。