爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「料理の科学 加工・加熱・調味・保存のメカニズム」齋藤勝裕著

料理とは食材に変化を加えているのですが、その変化とは化学的・物理的なものであるということは、なかなか実感できないものかもしれません。

しかし、見る人が見ればそういった実態が分かるということで、有機化学などが専門の大学教授、齋藤さんが色々な調理の中に含まれる科学的要素を解説してくれます。

こういった知識を持っていれば料理も上手になるのでしょうか。

 

第1章はまず「料理は化学実験と同じ」という導入部から入り、基本的な解説からスタートします。

第2章では「加工の科学」として、洗う・アク抜き・切り分ける・溶解と混合・コロイドといった話題へ。

第3章では「加熱の科学」、ほとんどの食品では加熱が重要な要素ですが、そもそも「熱とはなんだろう」というところから説明、そして燃焼や電気による熱、食品の熱変化と進みます。

第4章は「調味の科学」、ここも味覚と嗅覚の仕組みから始まり、そこに働きかける調味料というものを説明していきます。

最後の第5章は「保存の科学」、食品はどうしても劣化していき腐敗を起こし、無理に食べれば中毒といったことになりますが、それを少しでも遅らせるために多くの手段が取られます。

 

鍋物や煮物では「アク取」という手間が必要になります。

有毒なものが含まれる場合もありますが、多くは単なるタンパク質などで無毒です。

しかし、味と見た目が悪くなりますので、できるだけ取り除いた方が良い場合が多いようです。

ただし、「豆乳鍋」で豆乳を使った場合は少し意味が異なるということを知らない人もいるようです。

これは豆乳の中の成分が塩析して固まってくるもので、豆腐と同じものです。

したがって、これを食べなければもったいないというものです。

なお、できるだけこれを少なくしようとするなら鍋の中には調味成分や入れなければ良いようです。

 

調味料を入れる順番を「さしすせそ」つまり砂糖、塩、酢、醤油、味噌の順で入れろという話があります。

これを科学的に考えると、砂糖は分子の大きさがかなり大きく、食材の細胞膜を通り抜けるのに時間がかかるため、早く入れるべきなんだとか。

塩はそれと比べるとはるかに分子が小さいので細胞膜を通りやすいことに加え、浸透圧に与える効果が砂糖の6倍以上もあるため早く入れると細胞が縮んで固くなるのだそうです。

酢・醤油・味噌は香味成分が揮発性のものがあり、長く煮込むと蒸発してしまうので最後に入れた方が良いそうです。

 

日本の一般的な塩は以前は流下式塩田製塩法で作られていましたが、1972年よりイオン交換膜法に変えられました。

その前後の成分の変化のグラフが掲載されていますが、NaClの純度はほとんど変わっていません。

また意外なことにCa、Mgも変化は少ないようです。

しかし、SO4(硫酸イオン)がかなり減少しており、またK(カリウム)が増加しているそうです。

イオン交換膜法になってから塩のうま味がなくなったと言われますが、この差なのでしょうか。

 

なかなか興味深い話が色々と紹介されていました。