爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「星への帰還」エーリッヒ・フォン・デニケン著

(内容に入る前に、この本には昔よくあったような店名が印で押されたカバーが掛けれれています。それは私の持っている本の中でただ1冊であり、そのためこの本を買ったのが何年何月かということが正確に判明しています。それは1971年7月23日、高校2年生の時に蒸気機関車の写真を撮影するために東北地方を旅行した最終日、山形県酒田駅で東京に向かう夜行列車に乗る前に、駅前の青山堂駅前店で買ったものです。その書店はかなり以前に閉店してしまったようです)

 

 

人類の文明は宇宙からやってきた知性によってできたとする著書を何冊も書いた、スイスのエーリッヒ・フォン・デニケンの作品です。

彼は「アマチュア科学者」であるつもりだったようですが、ウィキペディアには「SF小説家」とされており、この本の訳者である金森誠也氏が書いた巻末のあとがきも宇宙人の来訪を扱うSF小説ばかりを関連付けて説明されており、SF小説扱いだったことが判ります。

しかし、本書の文章から感じ取れるのは、そういったSFを書こうという意図ではなくあくまでも科学的な真実を知りたいという思いです。

 

ただし、著者は科学というものについてかなり深い知識は持っているものの、それが最後のところまで届かずに不足したために、宇宙人(神)に頼るということになったのでしょう。

1970年代の出版ではありますが、すでに遺伝子というものも知られておりそれを改変する技術も考えられていました。

そのことを知っていたデニケンは人類は宇宙人によって遺伝子が改変されジャンプアップしたものと考えたのですが、自然な突然変異でもそれが起きるというところまでは思い至らなかったようです。

 

数多くの古代文明の遺跡についても、「こんなものが古代人にできるはずはない」という思いに囚われたため、宇宙人の影響ということに結びつけてしまいました。

その後の地道な科学者の解明で、かつての古代文明であってもそういった遺跡を建設することが可能であったことが判ってきていますが、もはや宇宙人説にからめとられてしまった彼には何もかもがそのせいだと考えるようになっていったのでしょう。

 

とはいえ、出版当時には彼の他の著書も合わせてかなりの販売数となり多くの人に影響を与えたのかもしれません。

善かれ悪しかれ、一つの大きな存在だったということでしょう。