爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「彼らはどこにいるのか 地球外知的生命をめぐる最新科学」キース・クーパー著

もうかなり前になりますが、地球外に知的生命がいるのではないかとして、電波で呼びかけるということを実施したということは知られていることかもしれません。

SETIプロジェクト(地球外知的生命探査)というものでしたが、幸いにも?何の反応もないままとなっています。

今では予算もほとんど無くなりましたが、細々とした活動は続いているようで、本書著者のクーパーさんも一時そのプロジェクトのメンバーとなったことがありました。

 

しかし初期の活動はただやみくもに電波を宇宙に向けて発しただけとも言えるもので、後から考えれば「もしも悪意のある宇宙人がそれを見て攻めてきたらどうする」などといった反対意見も出てくるなど、その後科学的知見が充実してくるにつれSETIプロジェクトも影響を受けてきました。

 

この本では、SETIプロジェクト自体についてというより、地球外に知的な存在があるかどうか、またあるとすればそれはどういったものと想像できるかなど、現在も多数出てきているこのプロジェクトに関わる科学的な知見についてあれこれと触れています。

 

例えば、「初期の考えでは文明の発展した知的生命は利他的性格を強めるはずだ」としていましたが、本当にそんなことが言えるのか。

また、電波を使って発信したがその方法は妥当と言えるのかどうか。

そもそも生命が誕生した地球というのはごくごく例外的に恵まれた偶然が積み重なってできたものであり、宇宙に生命体は他にはないのでは。

ただし、地球のような生命だけが生命ではなく、他の全く異なる形態をとる可能性もあるのでは。

地球でも人類文明というものが急激に発展し宇宙に存在を発信できるまでになったが、この文明もいつまでも続くわけもなく、それを考えれば宇宙を相手にできる期間というのはごくわずかでしかなく、他の文明と重なり合うことは奇跡のような偶然でしかないのでは。

そういったことを説明していきます。

 

まあ、あまりにも詳しく専門的に解説してありますので、とても簡単に要約などということもできません。

 

一つだけ「月の条件」ということについて書き留めておきます。

レア・アースという言葉は普通は「希土類元素」を指しますが、惑星科学者たちの間では「貴重な地球」という意味で使われており、文字通り「生命の誕生という奇跡が起きた地球」という内容を示します。

水が凍らないでなおかつ沸騰もしない温度であり、その水が適度に分布しており、さらに惑星内のコアには十分な熱量があり対流している等々、現在の地球の生命が誕生する条件としてはどれが無くても不可能であったと考えられるのですが、それが全部揃っているのは地球以外にはないかもしれないということです。

その中でも地球には衛星としては非常に大きい月というものが一つだけあるというのも不思議な条件となっています。

この月が適度な速度で公転していることで、地球中心部のコアの高温の鉄が回転し、磁場を作り出すことで有害な宇宙線を防いでいます。

他の惑星には無いこのような月というものがどうやってできたのか。

それはどうやらできたての地球にかなり大きな惑星テイアという星が激突し、それで月になる部分が飛び出して衛星となったということです。

そのようなことが本当にあり得るのか。

それを惑星科学者たちがスーパーコンピュータを用いてシミュレーションし、極めて限られた条件下では可能であったということを示したそうです。

テイアの進入速度、角度、地球との衝突角度等々、それこそ奇跡のような条件が重なり、その結果あのような月が今の位置に飛び出したと言えるとか。

 

SETIプロジェクトにはもはや政府からの金は出なくなっているようですが、まだ細々とは続いていくのでしょう。

成果が出るとは思えませんが、それを考えることは地球自体について考えることなのでしょう。