爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「アラビアンナイトをたのしむために」阿刀田高著

阿刀田さんは小説家ですが、「旧約聖書を知っていますか」などの「知っていますか」シリーズや、本書や「シェークスピアをたのしむために」などの「たのしむために」シリーズなど、古典文学などを題材としたエッセイ集も数多く書かれてきました。

 

この本では「アラビアンナイト」を取り上げ、様々な話について思う所をあれこれと展開するという方法で書いていきます。

 

アラビアンナイトといえば、「アリババと40人の盗賊」や「船乗りシンドバットの冒険」といった子供にも知られているような話が含まれているのですが、それ以外にも男女関係のあれこれを書いた話もあるということもある程度は知られていることでしょう。

内容にはあまり統一性もなく、かなり幅広いものですが、一応一人の女性が王様にむかって1001夜の間物語を語ったという体裁にはなっているものの、どうやら当時の民間に広く語られていた様々な物語を集めて出来上がったという由来のためのようです。

そのため、あちこちに相対する内容のものがあったり、教訓的なものでもバラバラの教訓が語られたりと、複雑な構造になっています。

 

この本に取り上げられた話は、さすがに有名なものは含まれておらずおそらくほとんどの人は知らない説話ばかりかと思います。

「アジブと40人の美女」「バグダッドの幽霊屋敷」「紺屋と床屋の物語」といってもおそらくその内容は全く分からないでしょう。

まあ、この本の中でもその話の詳細が紹介されているわけでもなく、要約とそれについての阿刀田さんの解説が述べられています。

また、説話の中で舞台が「シナ」というものがかなりあるのですが、当時のアラビアではシナという所があるということは分かっていても、その詳細はほとんど知られていなかったのか、描かれている習俗などはとても中国のものとは思えないようなものです。

単に「昔々あるところに」のような「遠いどこかの国」という意味で「シナ」という言葉が使われたのでしょう。

 

まあ、この本を読んでから「アラビアンナイト完訳」を読もうという人は居ないでしょう。これで十分か。