爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「新型コロナ『正しく恐れる』」井上亮編、西村秀一談

この本は井上亮さんが西村秀一さんにインタビューしてまとめたものです。

西村さんは感染症の専門家の中でもウイルスが専門と言う、コロナ禍の中でも最も中心にいるべき人だったのかもしれません。

しかし、政府や行政からしかるべき役割への招聘ということはされなかったようですが、その理由はこの本の中での政府の対応やいわゆる専門家たちに対する鋭い批判を見れば分かります。

 

日本にはやや遅れて侵入してきた新型コロナウイルスですが、それへの対応は政府に助言をするいわゆる専門家たちによって、大きく狂わされました。

さらに、それ以外の専門家による批判も激しいものですが、それもウイルスを良く知った西村さんから見ると的外れのことが多数あるようです。

 

なお、本書は2020年の10月30日に初版発行、書き上げたのがその少し前ということで、現在(2021年9月)の感染状況とはかなり異なり、またワクチンもようやく先行するファイザーなどが供給を開始といった時期であり、その効果も副反応発生もはっきりとはしなかったということは考慮しなければなりません。

しかし、書かれている多くの点については現在でも大きな問題であり続けていることが多いようです。

 

 

最初に強調されているのは、このウイルスの主な感染経路は「空気感染」であるということです。

この点は他のウイルス感染症専門家からも指摘され続けているようですが、まだ公式には政府は認めていません。

そうではなく、飛沫感染接触感染、そして「マイクロ飛沫感染」(こんな術語は無いようですが、どうしても空気感染を認めたくない政府が作り出したようです)だとしているために、意味のない「感染対策」が横行し、それを信じた国民が必死で対応するのが無駄になっています。

 

西村さんはあのクルーズ船入港時に全国の国立病院機構から応援医師を動員された際に実際に乗り込んだそうです。

そこを見て、これは空気感染であるということを確信したそうです。

その時には公式見解では接触感染ということで、あたかも船の乗員が手を洗わずに各部屋にウイルスを持ち込んだかのようなことを言われました。

しかしあの船の空調設備は全艦内に繰り返し空気を送り込むもので、この中でウイルスが空気中に漂えば確実に皆感染することは明らかでした。

しかし、もしも空気感染であるとするとその後の対策が大変なこととなるために、半ば政策的にその可能性は排除されたようです。

 

そのような感染経路の間違いのために、多くの意味のない対策が強要されるようになりました。

感染で亡くなった人の遺体を密封し、家族にも会わせることなく火葬にするということが行われましたが、遺体からウイルスが感染するなどと言うことはまずあり得ません。

しかし、ゼロでなければその危険を避けるということでこのような非人間的な行為が横行しました。

マスクだけでなくフェイスシールドを付ける人も増えましたが、これでは空気感染は防げません。

マスクをした上でするならまだしも、これだけでは意味のない対策です。

飲食店などでアクリル板で各座席を仕切るという対策も多いのですが、これも空気感染であればほとんど効果はありません。

 

感染初期の頃はPCR検査もなかなか実施できず、これができないことが対策の遅れだと多くの批判を招きました。

しかし、あの時点ではPCR検査用のキットの在庫数も限られており、それを使い果たせば入手が難しいというものであり、急な発注も難しいものでした。

しかもそれで陽性者が多数出た場合の収容施設の準備もない状態であれば、無症状者であっても病院入院させねばならず、すぐに医療崩壊につながったはずです。

 

その後、PCR検査の方式に手を加えて多数の検体を素早く検査できるようにしましたが、それでかえって検査結果の信頼性が低下し、擬陽性、擬陰性の発生も増えたようです。

 

政府への助言をする専門家、テレビなどで話す専門家という人々が大活躍をしていますが、その中に「本物の専門家」がどれほどいるのか。

実は「感染症の専門家」と言っても、その病原体がカビ、細菌、ウイルスの違いがあり、本当のウイルスの専門家でなければ間違う場合もあります。

そういった専門家はギリギリの判断はできないため、少しでも危ないところはこれは危険と言ってしまい、過剰な対策をすすめることになりかねません。

 

実は日本だけでなく世界的にも感染症の専門家は圧倒的に細菌を主としています。

細菌の感染対策は「まず手洗い」ですから、これが今回も最初に強調されます。

これは日本でもアメリカでもWHOでも同様です。

ウイルス専門家は世界でも数少なく、その240人が連名で「コロナは空気感染だ」という書簡を公表したそうですが、まだその力は弱いようです。

 

ワクチンについても詳しく触れられており、その副作用の危険性は強調されるとともに、ワクチン供給の「南北格差」にも言及されています。

これはまさに現在大きな問題となっているところであり、例えば「日本が1億回分のワクチンを購入するなら同数を購入して途上国に出す義務を定めよ」とされていますが、まったくその対策はされていません。

 

西村さんはこういった政策、対策をすべて詳しく記録に残せとしています。

このような感染症は史上初めてとも言えるものです。

この対策がどうだったのか、どこが間違っていたのか、それを記録することが非常に重要だとしていますが、全くできていないのでしょう。

 

ワクチン接種が進んでもまだ流行は何年も続くだろうと結んでいます。

ただし、流行性感染症は感染が広がるほど重症化率が落ちていくのが普通だとも言われています。

それを期待して待つしかないのでしょう。

 

この本の出版から1年近くが経っていますが、多くの問題はそのままのようです。

ワクチンの接種は進んでいますが、まだ感染を抑えるまでにはほど遠い状況です。

幸い?副反応は心配されていたほどは発生していないようですが、油断はできません。

しかし、あの「感染対策はやっています」のアリバイ工作として、これ見よがしにアルコールでそこらじゅうを拭いたり、アクリル板で囲ったりというのはほとんど意味ないのではと思っていましたが、どうやらその通りだったようです。

専門家の意見が自分のものと一致するとなぜかうれしい。