元毎日新聞記者で、食品関係に詳しい小島正美さんが始めた「フードニュースオンライン」でこのところゲノム編集食品について取り上げられています。
ゲノム編集食品とは、従来の遺伝子操作とは異なり他の生物の遺伝子を入れるのではなく、そのものの遺伝子のみを操作するため、これまでの遺伝子操作生物の規制が及ばないためにそれをどうやって統制するべきか、論争が続いています。
トマトなどの農産物で実用化の動きが出ているようですが、それに反対する人々も多く対応が模索されているところです。
第42回 ゲノム編集トマトが、なんと「健康食品」に! スーパーに並ばず、ネット販売でデビュー | FOOD NEWS ONLINE フードニュースオンライン
第43回 「食べたい権利」こそ守られていない!? ゲノム編集トマトに見る「バイヤーの壁」 | FOOD NEWS ONLINE フードニュースオンライン
第44回 ゲノム編集ジャガイモ、市場化へ前進 野外栽培実験がスタート | FOOD NEWS ONLINE フードニュースオンライン
従来の遺伝子操作作物は、除草剤耐性遺伝子を持った大豆やトウモロコシといったように、生産者側の都合に合わせるようなタイプのものが多かったと言えますが、この最初に取り上げられたゲノム編集トマトのように、消費者にとって有効であるような改良が加えられているのが新しいところでしょうか。
遺伝子操作の段階でもこのような栄養強化と言った方向性もあったのですが、実用化は難しかったのでしょう。
しかし、操作対象が明確にしやすいゲノム編集ではこれからもどんどんと開発が進められてくるのかもしれません。
遺伝子操作作物の流通については、「遺伝子操作であることを明記すること」が指摘されてきました。
遺伝子操作作物を拒否したいのに、それが分からないのは嫌だというのが消費者側の主な主張であったようです。
しかし、どうやら今回は「ゲノム編集トマトを買いたいのに買えない」という事例が出てきそうです。
このゲノム編集トマトは、健康成分としても知られているGABA(ガンマアミノ酪酸)を通常の5倍以上も含むということです。
これを買いたいという人も確かに居る可能性は十分にあります。
しかし、このトマトが法的に販売可能であっても、スーパーなどの一般小売店に並ぶ可能性はまずありません。
そのために、このトマトの開発会社が模索しているのが「ネット販売」だということです。
スーパーで販売されるためには、そこの仕入れ担当者「バイヤー」が購入を決定しなければ不可能です。
そのため、バイヤー次第ということがあり、これを「バイヤーの壁」と言うそうです。
現状では遺伝子操作作物はもとより、ゲノム編集作物もバイヤーが購入販売をすることは無いだろうということです。
遺伝子操作作物の場合は、「食べたくない人が買うことがないように」することが重要視されました。
しかし、このゲノム編集作物のように「買いたい人が買えない」という事態もあり得るということでしょう。
確かに、ゲノム編集という技術はまた新たな時代を作ろうとしているのかもしれません。