食品問題について詳しい解説をされる松永和紀さんが、「ゲノム編集」について説明されています。
「ゲノム編集」技術は医療分野でも可能性が追求されていますが、食品分野では実用段階に近づいており、開発研究が進められています。
しかし、これまでの「遺伝子組み換え作物」などに対する警戒感をそのままゲノム編集食品に対しても持ちづつける人が多いようです。
松永さんの上記記事でも、最初に「報道記事」の問題点が指摘されています。
ほとんどが、以下のような書き方がされています。
1.ゲノム編集食品が近く、食卓に登場する
2.ゲノム編集食品はこれこれしかじか。安全だと国は言う
3.でも、リスクも指摘されている
4.新技術に、消費者は不安を訴えている
松永さんがよく書かれていることですが「両論併記というメディアの姿勢」がはっきりと現れています。
そして、この両論も実はその内容に大差がある状態です。
科学的には安全と言ってしまって間違いない程度の話であり、不安という人は理解ができていないだけとも言えるものです。
なぜ「ゲノム編集」は科学的には安全といえるのかという点について、2ページ以降に解説されています。
まず、これまでの「遺伝子操作技術」と「ゲノム編集」はまったく意味が違うということです。
遺伝子操作では、別の生物から取った遺伝子の一部を対象生物の遺伝子に組み込むということが行われていました。
そのため、操作の結果も自然にはほとんど起こり得ないものであり、その安全性の確認は難しいもので、不十分だという指摘も無理のない話でした。
しかし、「ゲノム編集」は遺伝子の中の特定の一部のみを切り取るという技術が中心となるため、外来の遺伝子の影響はありません。
これは、従来の品種改良技術と変わりのないもので、取り立ててこれを危険視することは出来ません。
(ただし、ゲノム編集技術の中には外来遺伝子を利用するものもあり、それは別の判断が必要ですが、それはまだ実現可能とは言えない段階のようです)
このようなゲノム編集技術ですが、遺伝子を切る酵素はその位置だけを切るわけではなく、同じ配列の部分がもしも別にあれば切ってしまいます。
そのため、遺伝子全体のマップができていない場合は使えないのですが、すでに多くの生物では全遺伝子が知られていますので、大丈夫ということです。
ただし、この「オフターゲット変異」の危険性は注意しておく必要があります。
なお、このオフターゲット変異の危険性は、「医療分野」では大きな問題となる可能性があるのですが、「食品分野」ではそれほど問題ではありません。
医療では患者一人一人が問題ですが、食品では実施例の一つ一つが失敗が許されないわけではなく、うまく成功したのが一つあれば良いのですから。
EUではかなり制限のきつい規制がかけられるようですが、これには科学者側からの反論も多いようです。
この技術に対する懸念というものが、具体的な事例として挙げられていることはないようで、あくまでも「こういった危険性がありうる」といった程度の指摘にとどまるようです。
しかし、このような科学界の最先端の技術が実生活に関わってきても、その意味を的確に一般に解説できる人物がなかなか居ないというのが問題の一つでしょう。
そのため、メディアの報道も無知丸出しでトンチンカンなことを書き、それがさらに読者の混乱を招くということになっています。
その意味で、これを書いている松永さんは貴重な人材と言うことができます。