リスク学研究者の永井孝志さんが定期的に更新されているサイトの最新記事です。
リスクといってもいろいろありますが、肉体的なリスク(健康面等)の他に、精神的、社会的リスクも含めた統計データを整理したということです。
この中で示されていた図が非常に印象的なので転載させていただきます。
健康、安全、豊かさ、そして生活満足度という表題で示されていますが、その中身は縦軸の内容として示されている、平均寿命、他殺による死者数、一人当たりGDP、そして内閣府の調査で暮らした良い方に向かっていると答えた人の割合を表しています。
永井さんが言いたいことを非常に分かり易く示されていますが、横軸の年が少しずれはあるものの、寿命は1950年以降急激に伸びており、犯罪被害も減少、そしてGDPは1970年以降(高度成長期を過ぎても)ずっと伸び続けているにも関わらず、生活満足度としてあらわされている数値は1990年頃を最高に下がり続けているというものです。
これを永井さんは次のようにまとめています。
私たち日本人はより健康になり、より安全な社会に暮らし、より経済的に豊かになっているのに、暮らしはより悪い方向に向かっていると感じています。つまりさまざまなリスクが下がっているのに幸福ではなくなっているようです。これは大きなパラドックスと言えるのではないでしょうか。
ちょっとよく考えれば誰でも思いつくような反論についても答えは用意されています。
つまり、「この指標だけでは捉え切れていない要素があるのでは」
ということですが、それについては、肉体面については「死因が変化したのではないか」経済面については「格差が拡大し貧困層が増えたのではないか」といった変化も提示しています。
そして最後に示されているのが、家族関係の変化、すなわち未婚率の上昇でした。
さらに労働状況が不安定化し将来の不安が増大していることもマイナス面です。
健康に、豊かになっているように見える日本ですが、将来への不安が増大しているために幸福とは言えない。
中国春秋時代の名宰相管仲が言ったとされる「衣食足りて礼節を知る」ですが、衣食は足りているように見えても礼節などは構っていられないというのが実情なのでしょう。
その中でも家庭と言うのが大きな要因なのでしょう。
未婚化率が急上昇というのは、結局は家庭の崩壊ということにつながっていそうです。
独り者の男性と、母子家庭(これも家庭というには値しません)ばかりになってくれば、幸福度というのは低迷しそうです。