爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ありふれた手法」星新一著

SFショートショートの大家と言われた星新一さんの著作ですが、昭和56年(1981年)出版ということですから、星さんとしては後期の作品になると思います。

そのためか、代表的な作品集とはやや雰囲気が異なり、ちょっとホラー風味で味付けがしてあったり、あの「エヌ氏、エフ氏」といった登場人物ではなく一応人名が出てきたりという特徴があります。

 

しかしまあ、ショートショートのネタバレを書いてしまうとほとんど全文紹介になってしまいますのでそれは止めておきましょう。

 

この本の面白かったところは、著者「あとがき」にあります。

 

ここで星さんは「SFショートの作り方」を公表しています。

 

ストーリーのアイデアをどうやって得るか。

これには「小話を覚えろ」と書いています。

小話を覚えて人に話せ、そうしているうちにストーリーを作るコツが分かる。

 

そこから話を進めていくのですが、思いつくままをメモしていきます。

数十の着想を書き留めるが、そのうちものになるのは1つあるかどうか。

ほとんどは動き出さないものですが、捨てるのももったいないので取っておいて、そのいくつかを抜き出して解説を施したのが「できそこない博物館」として新潮文庫にあるそうです。

 

それだけ頑張って作っても、原稿料は枚数計算。

割に合わないことですが、それでもなぜやっているのかがようやくこの時になって分かったそうです。

それは「サービス精神」

読む人に楽しんでもらいたいというその信念が原動力となったそうです。

 

こんな気持ちで書いていると、民話に近いものになるのではないか。

最後に「私は気づかずにいたが、本質は民話作家なのかもしれない」と結んであります。

 

このあとがきだけでも読んだ価値がありました。

 

ありふれた手法(新潮文庫)

ありふれた手法(新潮文庫)