爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「コメの歴史」レニー・マートン著

コメといえば短粒米と長粒米の分布程度のことしか考えていませんでしたが、実は世界の大半ではコメが栽培され食べられていると言えるようです。

なんとなく、小麦の方が世界的に多く食べられているように感じますが、熱帯から温帯の多くの地域、アジアばかりでなく中近東からアフリカ、ヨーロッパ南部、アメリカなどでもコメを栽培し食べているということです。

 

じつは、世界人口の3分の2はコメを主食としています。

中国や南アジアから広まったコメはインドネシアや日本に広がったのですが、中央アフリカから西アフリカにかけての地域でも独立してコメ栽培が始まりました。

これ以外の地域にはこれらの原産地から伝わっていきました。

 

コメは水田で作られることが多く、そのために小麦などよりはるかに高収量が得られます。

また、栄養価も高く副食が少なくても健康が維持できるという特性を持っています。

 

コメには大きく分けて2種の種類があり、一つはアジアイネ(Oryza sativa)で、もう一つはアフリカイネ(Oryza glaberrima)です。

アジアイネは中国南部からインド北東部から広まりました。

ジャポニカ米、ジャバニカ米と言ったり、短粒種、長粒種と分けたりしますが、どれもこの種に含まれます。

一方、アフリカイネはアフリカのニジェール川流域の原産で、赤い色をしておりレッドライスとも言います。

コメにはこの2種がありますが、その後アジアイネは全世界に広がっていきました。

アフリカイネはその地域の人々が奴隷として連れて行かれたアメリカなどに伝わったものもありますが、その後はあまり広くは栽培されていません。

塩分に強いという性質がありますので、有効利用ができるかもしれません。

 

コメの食べ方には、世界各地の伝統もありまたそれが最近では相互に交流しあうということもあり、世界中でいろいろな料理が食べられています。

寿司が全世界に広まったのも印象的ですが、他にも各国の料理が知られてきました。

また、日本発祥の電気炊飯器も世界中に広がり米料理を広めています。

 

コメと文化というところにも著者の考察は及び、日本の天皇家の祭祀にコメ栽培に関するものが多数存在することも紹介されていました。

 

コメに大きく依存してきた日本ですが、最後に訳者の龍和子さんが紹介されているように、2010年の一人あたりコメ消費量は55kg,消費量トップ20にも入っていないそうです。

20位の韓国でも76kg,コメの国とは言えなくなっているようです。

 

コメの歴史 (「食」の図書館)

コメの歴史 (「食」の図書館)