爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「磯野家の相続 波平の遺産はどうなる?」長谷川裕雅著

取り付きやすいようにサザエさんの磯野一家を舞台にしていますが、内容は非常に真面目な遺産相続対策です。

著者も弁護士の長谷川さん。

 

まあ、家族構成とかは想像しやすいのですが、波平に隠し子がとか、カツオが非行を繰り返すとして相続廃除されるとかいった事態はまあありそうもないことで、少し無理があったかもしれません。

 

しかし、こういった本で著者の弁護士さんや司法書士さんなどが強調されるのは、「どんな家でも相続争いが起きる可能性がある」ということです。

たとえ、家族の仲が良かろうと、家にほとんど財産が無かろうと、相続問題は必ず「もめる」と思わなければならないと言われます。

それでも、きちんとした遺言を準備するといった対策をしておけば悲劇を防げるということですから、やはり誰でも考えておくべきことなのでしょう。

 

人が亡くなった場合、必ず相続という問題が発生します。

自明のことのようですが、きちんと確定しなければならないのは「誰が相続人か」ということです。

意外にこれが認識されていないようです。

民法で相続人の範囲を規定しており、これを法定相続人と言いますが、これには「配偶者相続人」と「血族相続人」があります。

 

配偶者相続人とは被相続人(亡くなった人)の妻または夫で、相続開始時(亡くなった時)に配偶者であればその権利があります。その後再婚したとしてもそれは無くなりませんが、亡くなった時に離婚していれば権利はありません。

また、法律上の婚姻関係にない内縁関係、愛人もなれません。

 

血族相続人とは、被相続人直系卑属(子、孫等、実子か養子かは問わない)、直系尊属(父母、祖父母)、および兄弟姉妹を指します。

ただし、これらの人たち全てに同時に相続権があるわけではなく、直系卑属が居ればその他の血族には相続権がありません。

 

こういった相続人は普通は明白と思いがちですが、人の世は結構いろいろあるもののようで、若い頃に一時入籍し子供まで生まれたが別れてしまったということはよくあるようです。

その後のことしか知らない家族には初めて聞く兄弟というのも時々あるようです。

また、その後の話でも愛人に隠し子がということもあり得ることです。ただし、この場合は認知していなければ相続人となることはできません。

 

相続が始まる場合、相続すべき財産の範囲を確定させなければならないのですが、これが結構大変な作業のようです。

もちろん、不動産や預貯金などはわかりやすいのですが、借金やローンなどのマイナスの財産となると結構隠れていることもあるようです。

相続放棄と言う手続きもできるので、マイナスの方が多い場合は放棄するという人も多いのですが、その期限は3ヶ月。それまでに家庭裁判所相続放棄の申告をしなければなりません。

実はヤミ金などの悪徳業者は借金の催促を3ヶ月が過ぎてから行うこともあるとか。相続人が逃げ出さない(相続放棄しない)ことが確定してから請求することもあるということです。

 

様々なトラブルを防ぐためにも、誰もが遺言書を作成しておくことが勧められるそうです。

もちろんその中では相続人が誰かということも確定させているでしょうし、財産目録もきちんと整理されているでしょうから、いきなり相続が始まることを思えばトラブルが少なくなるかもしれません。

ただし、遺言書の作成にも色々な問題があり、自筆遺言の場合は全部自筆(ワープロなどはダメ、財産目録も自筆)ということがあり、これで結構ダメになるケースがあるようです。

 

油断せずに早く遺言を作っておいたほうが良いのかも。

 

磯野家の相続

磯野家の相続