爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「カツオが磯野家を片づける日」渡部亜矢著

題名からはあの漫画のサザエさんの話かと思いますが、状況を借りただけで内容はとにかく老親の家をどうするかという現代の多くの人が抱える問題を扱ったものです。

 

それを、サザエさん一家というよく知られた家族構成を利用し、わかりやすく解説しようというものです。

ついでながら、花沢さん早川さん中島くんという友人も登場します。

 

場所はおなじみの東京世田谷の磯野家ですが、漫画の時代よりは30年ほど経過し、波平さんが84歳で亡くなったあとの話です。

波平・フネの夫婦二人だけの生活となっていたのですが、波平さんに先立たれフネさんはそれまでも片付けができていなかったのが何もやる気をなくしてしまいました。

 

サザエ・ワカメの女性二人は近くに居を構えていますが、カツオはまだ独身、会社の寮に暮らしているという設定です。

 

波平さんの49日法要を前に、相続の話もしなければならないのですが、そのための重要書類を探したくてもほとんどゴミ屋敷に近づいている磯野家をまず片付けなければなりません。

 

親が亡くなった場合も、存命の場合もありますが、「実家の片付け」というのは今や社会問題ともいうべき状況です。

子供世代と同居という老親が少なくなってしまい、老人となった親が一人か二人で住んでいるという実家が問題というのは誰しも同じという状況になっています。

 

なるべくなら、まだ親が元気な内に片付けを始めさせるのが重要です。

その際の話の持って行き方も難しく、相手を見ながら説得しなければ上手くいきません。

子供にとってはただのゴミの山にしか見えないものでも、親世代にとっては「捨てる」という言葉は禁物です。

どうしても「捨てる・捨てない」の判断で迷いますが、ここではもう一つ「一時保管箱」という場所を作って、迷ったものはここに入れてしまうというのが良策です。

そこに入れるようなものはたいていは要らないものなので、そのうちに捨てることができるそうです。

 

やはり遺産整理より、生前整理の方がはるかに効率的なようです。

これを上手くやってもらえるかどうか、子供の説得次第のようです。

できれば遺言状も書いてもらえばベストですが、少なくとも財産の実態や貴重品の在り処ははっきりさせておくべきでしょう。

 

なかなか身につまされる内容です。