爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「実践 日本人の英語」マーク・ピーターセン著

日本を訪れる外国人も増え、彼らが日本語を話す場面もよく目にするようになりましたが、驚くほど上手な人もたまには居るものの、多くは「片言の日本語」を話しています。

それと同じか、もっとひどい状況が我々が英語を使う時に起きているということで、著者のピーターセンさんは長らく日本で英語の指導をしていると、日本人特有の間違いがあることに気がついたそうです。

一応、英語で意思疎通ができる程度ではあっても、そのような片言の英語を使っていては相手の態度も違ってくるでしょう。

さらに、そのような英語は子供っぽい印象を与えてしまうことにもなりかねません。

ビジネスや学術関係で英語を使う場合はできるだけ避けたほうが良いのはもちろんです。

 

日本語で、「AのB」という表現は必ずしも所有を意味するとは限りません。

しかし、どうもこういった場合に英語にする時に、「A’s B」ないしは「B of A」としてしまいがちなのが日本人の英語だそうです。

「クラスメートの彩香ちゃん」を表す際に、ofなどは使えません。

これを言い換えれば「クラスメート である 彩香ちゃん」となるはずであり、英語で書く場合は「Ayaka, a classmate」と単にカンマで区切るのが最上です。

 

英語は「数」に関する感覚が厳密であると言えます。

単数と複数の違いというものは厳格に意識されており、冠詞もそれに応じて使い分ける必要があります。

これは嫌でも我慢してクリアしなければ片言英語からの脱却はできません。

ただし、moneyのように数えられない名詞の場合もあるために複雑で分かりにくいところです。

 

時制というのも日本人が引っかかりやすいところで、状態の動詞、動作の動詞の違いも絡むと相当難しいのは確かです。

やはり日本語ではあまり意識されない現在完了形、過去完了形の使い方というものが困難さを増しているようです。

さらに、「未来完了進行形」などというものもありますが、著者がこれまで指導してきた大学生の英作文では、未来完了進行形を使うべき場合でも間違いなく使われたと言う例が一つも無かったそうです。

 

日本語と英語の単語の間に、1対1の対応などはあるはずもないのですが、どうもそれがあるものと錯覚して使ってしまう単語も多いようです。

この代表的な例が「challenge」と「expect」で、日本人はどうしても「challenge=挑戦する」「expect=期待する」と考えがちですが、とんでもない間違いのようです。

challenge+目的語の場合は、「挑発する」「異議を唱える」と言う意味ですし、expect+目的語は「予期する」と言う意味であり「望ましい状態を期待する」という意味はありません。

著者は、この間違いがほとんどすべての日本人に行き渡っているのは何らかの理由があるのではと疑っています。

 

接続詞の使い方にも日本人特有の問題点があるようで、原因や理由を表すために使われる接続詞として、異常に「so」を使いたがると言うことがあるそうです。

著者はこれが日本語の「それで」と音の雰囲気も似ているからではないかと考えていますが、英語の場合のsoは注意を要する単語です。

日本人の使う「それで」という、因果関係を表すようでゆるやかな「成り行き」を表すような接続詞とは「so」は全く異なり、sinceやbecomeよりもさらに緊密な因果関係をもつ場合に使われるものです。

必然的なつながり、明確な因果関係を持つつながりの文章の場合のみに使うべきです。

 

日本語の悪い使い方に、「と思う」や「など」が頻発するということがあります。

少し表現をボカしたいところに使われることがあり、実際は私はそう思うというしっかりとした状況なしに、「と思う」が入ったり、例示がすべて終わっているのに最後に「など」を付けてしまう話し方をする人がよくいます。

これが英語に訳す時にそのまま出てしまい、「I think」を不自然に入れてしまったり、「and so on」を付けたりしてしまい、英語話者をイライラさせることが多いようです。

条件反射的にand so onを付けられる場合もあり、「一体いくつあるんだ」と疑惑を持たれます。

 

片言の英語でも話せないのに、その先の話を聞くとがっかりするばかりですが、これが現実なんでしょう。

 

実践 日本人の英語 (岩波新書)

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