爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

因果関係と相関関係 栄養疫学では切実な問題 児林聡美さんのコラムより

FOOCOM.NET専門家コラムで興味深い記事を書いている、栄養疫学研究者の児林聡美さんが、相関関係と因果関係ということについて解説しています。

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栄養疫学に限らず、「疫学」という研究手法はあるがままの実態を様々な方向からみていくことで真相にたどり着くという道筋を辿りますので、この相関関係と因果関係と言う問題が常につきまとうものです。

 

児林さんが記事の中で例に取っているのが、「日本人のコメ摂取量の経年変化」と「日本人の交通事故死者数の経年変化」です。

これが、実にきれいに減少傾向が一致しています。

もちろん、この2者に因果関係があるはずもないことは誰にでも分かりますが、同じ期間を取り同じ日本人のデータであるということでかすかな関係はありますので、相関関係と言うことは可能です。

 

しかし、これが「交通事故死者数」ではなく、何らかの疾患の患者数や死者数であったらどうでしょうか。

これがもしも同様の減少率あるいは逆に増加率であったとしたら、「米の摂取量の減少がその疾患の減少(または増加)である」という判断をする人も出そうです。

 

このような、「因果と相関の混同」というのはあちこちで見られるようで、健康関係の情報では医者など専門家の発信のものでも間違えている(あるいは故意に取り違えている)例が頻発しています。

たとえば「加齢とともに◯◯の体内濃度が低下するので、補いましょう」といったものでしょうか。

危ない危ない。

 

また、もう一つの例で引かれているのは、血圧の値とナトリウム摂取量の関係です。

この数値だけを見るとナトリウム摂取量が低いほうが血圧が高いと判断されるのですが、実はその摂取量が低い人たちは高血圧のために減塩食摂取の指導中ということで、摂取量が低くてもまだ効果が出ていないのだとか。

 

このように、疫学調査では多数の調査対象からのデータをまとめますが、その事情は千差万別、いろいろな状況があることを忘れてはならないようです。

 

児林さんのこのシリーズ。なかなか基本的な科学的視点について教えてくれることが多いようです。