爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ゲランドの塩物語」コリン・コバヤシ著

ゲランドの塩とはフランスブルターニュ地方で海水から天日で作られる天然塩で、美味で料理の味を上げると言われているものです。

その塩について日本出身でフランス在住の著者が解説をしているのですが、その塩としての性質の良さを強調するのかと思っていたらなかなかそういった描写にたどりつかず、環境保全についてや狂牛病・遺伝子操作の批判など、そして観光施設建設のために塩田が影響を受けそうになったことに対して生産者が共同で対抗したことなど、どうもそのような周辺事情のことばかりの描写が多かったので、違和感がありました。

 

それは最後に著者のあとがきを見て納得できました。著者は日本で美術大学に入学しましたが、当時の学生政治活動に没頭し活動しました。

しかし、東大安田講堂攻防戦の前にすでに活動の限界を感じ、日本を出てフランスに向かったそうです。

そこで様々なことに触れながら環境問題などに携わり、さらにゲランドの塩というものに触れてその昔ながらの製法と品質にほれ込んでいったそうです。

 

ゲランドにおける塩の製法というのは、海水を塩田に引き込んで天日で濃縮するというもので、日本でも伝統的に行われている塩田法と同様のようです。これはそのまま濃縮ではニガリ成分が濃くなりすぎるので適当に除去するのが肝心なのですが、その点についてはさほど記述はありませんでした。

 

なお、記述の中でちょっと気になったことがいくつか。リステリア菌の食中毒は「狂牛病と同様にこの15年ほどで今までは考えられないほど猛威を振るうようになった」とあたかも最近急激に増えたかのように書いてありますが、これは昔から存在したのではないでしょうか。

ただ食品流通の大規模化で一つの原因食物が大きく影響を与えるということはあるかもしれませんが。

また、ゲランドの塩にはフランスの有機農業推進団体の「ナチュール・エ・プログレ」が公認し推薦しているということですが、どうも「塩」が「有機」というのはおかしな気分です。まあ他の言い方がなければ仕方ないのかもしれませんが。