爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「バロック音楽」皆川達夫著

少し前に「中世ルネサンス音楽」の読書記録を書きましたが、このバロック音楽はそれよりは少し前に買った本です。皆川さんは専門はルネサンス音楽のようですが、この本を書かれた昭和47年(1972年)当時にはまだバロック音楽すら広く理解されているとは言えず、ルネサンス音楽などまったく見向きもされなかったのでしょう。
ようやくその当時聞き出されていたのはヴィヴァルディの「四季」程度で、まだバッハやヘンデルへの理解も乏しかったようです。

その中で、最終章にはバッハとヘンデルの詳細な紹介があるのは当然としても、最初から年代を追ってバロック音楽の全体像を紹介されたのは大変なことだと思います。

ポリフォニーという特色があったルネサンス音楽は1600年を境に衰え、その代わりに台頭したのがバロック音楽です。モンテヴェルディやシュッツといった人々が当時としては新しい音楽を始めていきました。

器楽の分野では新たな楽器が作られ、それに適した楽曲が作られました。ヴァイオリンの発達やクラブサンやオルガンの展開も大きなものでした。
オペラも大きく発展しました。また宗教音楽の面でも非常に優れた曲が作られました。

その集大成としてバッハが現れ多くの曲を作ったのですが、その晩年には早くも次の時代へと移り変わるような動きが強く見られ、ハイドンモーツァルトが活躍しだしたのはバッハやヘンデルが亡くなる頃だったようです。
また、バッハの息子たちも音楽家として活躍したのですが、その音楽ももはや父親のものとは全く違うものでした。

日本で言うと江戸時代の前期に当たる時代ですが、一つの時代を彩った音楽群があったということは今の時代から見ても楽しめることかもしれません。
なお、ルネサンス音楽の時にも書きましたが、この本を読んだ当初(30年以上前)には実際に聞くことができる音楽はせいぜいビバルディとバッハ程度で本書中に出てくる人の音楽もほとんど想像するだけでした。しかし、今はYoutubeで検索するといくらでも聞くことができます。良い面ばかりではないようなIT時代ですが、この点だけでは本当に良かったと思います。