爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「世界一の電気はこうしてつくられる」パワーアカデミー編著

パワーアカデミーという、電気事業連絡会関連の組織の編著により、おもに工学系を目指す中高生・大学生などを対象に書かれた本です。
平成21年の出版ですので、もちろん東日本大震災以前の話で、今では相当状況は変わっています。

日本の電力供給の安定性は世界一ということは良く知られた話ですが、単に停電がほとんど発生しないということだけでなく、電圧変動や周波数変動もほとんど起こらないということは知らない人も多いかも知れません。
交流モーターやコンピュータなど、電圧・周波数が変動すると作動が不安定になるものが増えている現在では、そういった電力供給の質を高く維持するというのは非常に大切なことで、それなしでは高度な電力社会である現代の日本は維持できないのは間違いないことです。

そのために電力会社はいろいろな施策をしていたわけですが、この本出版の時点では基礎となる原発の電力を元に弾力性のある火力を組み合わせるという方針で実施されていました。
それ自体は一見うまいシナリオのようでしたが、原発が停止した今となっては困った話になっています。

電力の質という面ではまったく正反対に位置する風力や太陽光はどうするつもりでしょう。

また、本書の中では水素を使う燃料電池も持ち上げられていますが、水素供給の点から見ても(水素爆発の安全性を考えず)成り立つわけもないことは明白でしょう。

学生向け書物の定番かもしれませんが、最先端で活躍する先輩たちの声というお決まりのページもあります。皆さん今もがんばって仕事をされているのでしょうか。