爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「香乱記 上」宮城谷昌光著

中国の秦帝国が滅亡し、劉邦が起こった頃、昔の斉の国を一時平定したかつての王の子孫で田横という人が居ました。斉国が滅んだ後は地方の小豪族であったものが、従兄や兄とともに立ち上がったものの、劉邦が早く中国全体を平定したために降伏するのですが、その際に酈食其(レキイキ)という説客の説得により降伏を決め軍備を解いたもののその隙をその後進軍してきた漢軍に打ち破られたというエピソードが知られているものの、詳しいことは知りませんでした。
しかし、漢の平定後に劉邦に招かれたものの自殺をし、それに殉じた者が500人というところまでは聞いたことがあったものの、それほどに人望に厚く人格の優れた人ということには思い当たっていませんでした。

宮城谷さんも田横についてはかなりの思い入れがあるようで、満を持して書かれた物のようです。

この上巻では発端から乱の勃発までを扱います。
斉の王族の子孫でありあがら秦により滅亡したあとは小さな豪族であった田横の一族は無難な暮らしを送っていたものの、田横の婚約者が新たに赴任してきた県令に目を付けられたことで暗転し、罠にかけられ投獄、さらに出獄のあとも暗殺者を送られます。しかし、武術にも優れた田横はなんとか切り抜けそのまま秦の都に入り、偶然助けた秦の皇太子扶蘇の娘の身を守ります。しかし、ちょうど始皇帝が没し、宦官趙高のたくらみで末子が二世皇帝として即位し、扶蘇は自殺してしまいます。
田横は趙高の手を逃れ斉に向かいますが、ちょうどその頃陳渉呉広の乱が勃発し、田横も否応なしにその戦乱に巻き込まれていくというところまでが上巻でした。

あまり知られているとは言えない人物の物語ですが、スリルとサスペンスを感じさせる出だしです。