爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「マナーとエチケットの文化史」ベサニー・パトリック著

人間社会ではどこでもマナーとエチケット、つまり挨拶や作法といったものが存在します。

ただ、問題は文化によってその意味がかなり異なることで、一つの社会では丁寧な作法が、別の社会では無礼と見られるということはいくつもありそうです。

 

著者のベサニーさんは世界諸国の事情についてかなり詳しいようですが、日本の記述を見ると若干古いものもありそうで、他の国も同様なのかどうかよく分かりません。

 

マナーとエチケットは、社会の各所でそれぞれのルールがあり、家庭から親戚知人、職場、地域社会、政府から国際関係まで、知らなければ滑らかな関係を築くことができないとも言えます。

そのためか、本書も挨拶や食事の際の作法からビジネスや外交まで、あまりにも広い範囲のマナーを扱っていて、かえって焦点がぼやけてしまっているのではないかと思わせるものがあります。

まあ、「食事のマナー」とか「ビジネスマナー」だけに絞った本というものは他にいくらでもありそうですから、その全体像をつかむという本書の存在は無駄ではないのでしょう。

 

各国のマナーと言う点では、アメリカや西欧といったところの事情は日本にも伝わりやすく、その雰囲気も想像しやすいのですが、それ以外の地域のことはあまり分かっていないと言えるでしょう。

 

ロシアでは西欧よりかえって作法にうるさく、問題ないと思える行動でも「ニクリトゥルーヌイ」つまり「非文化的」だと非難されることがあるそうです。

劇場で小指をくわえて口笛を吹く、椅子にどっかりと座る、ポケットに手を入れて立つ、美術館の階段に座る、こういった行為は皆非文化的だと言われるそうです。

ロシアはあのトップがあまりにも横暴で非文化的そのもののように見えるため、社会全体があまりマナーなどはわきまえていないように感じていましたが、それとはまったく違う社会があるようです。

 

これはポルトガルも同様で、映画館に行くにも必ずスーツを着る、狭い路地ですれ違う時は一歩身を引いて「お先に」と言うなど、かなり礼儀正しい国のようです。

 

日本の現在の事情がほんとうに分かっているかどうか、疑問を持たせる記述は「日本の女性はオフィスでは職場の花で、25歳になると結婚して退職することを望まれる」といったもので、50年も前の話のようです。

また東京の鉄道駅では押し屋の駅員が押し込んでいるというのも最近のことではないでしょう。

 

海外旅行でおなじみの「免税店」ですが、世界初の免税店が誕生したのが1947年のアイルランドのシャノン空港だったそうで、それほど古い歴史があるわけではないようです。

 

ちょっと話を広げ過ぎたような内容でした。

「各国のマナーの違い」といったところに焦点を絞っていたらもう少し参考になったかもしれません。