先日、毎月診察に訪れている病院に行ったところ待合室のテレビに流れていた番組の話です。
いつもは見ることもない番組ですが、病院待合室とあってはチャンネルを変えるわけにもいかず見るともなしに見ていました。
熊本ローカルの番組で県内の食べ物や農産物の紹介をするという、番組だかCMだか分からないようなものです。
その時流れていたのがサツマイモの産地を訪ねるというものでした。
熊本県はサツマイモのかなりの産出をする産地ですが、特に県北の某地は品質も良いものができると評判のところです。
それには栽培の技術もあるのですが、収穫後に低温保存を行なうことで糖化を進めとても甘いものができるということです。
そのサツマイモを試食するのですが、なんと「糖度50%以上」
リポーターの男性タレントがおそらく意味も分からないまま言ったのが「ほとんど砂糖じゃん」
実に本質を言い当てています。偶然でしょうが。
サツマイモなど芋類は食用とする部分(地下茎も)にデンプンを蓄えています。
デンプンは人間は食べても甘みは感じませんしそのまま食べても消化が進まないのですが、加熱してアルファ化すると分解しやすくグルコース(ブドウ糖)にして消化しエネルギー源とすることができます。
しかし、サツマイモの中にもデンプン分解酵素がありそれを働かせることで芋としての貯蔵中に甘みを強くさせることができます。
それがサツマイモの貯蔵効果でしょう。
これは多くの研究成果があり温度を適温にコントロールすることでスクロース(ショ糖)含量を高めて甘くすることができるとされ、その結果低温貯蔵法が確立されてきました。
上記テレビ番組で訪問した農家はその貯蔵法に卓越した技術を持っているようで、非常に甘い(糖濃度を高めた)ものができたということです。
ただし、そんなに甘いことが良いことなのか。
私など血糖値が上がりやすく糖尿病になる不安が強いのですが、糖分の高い食物というのは食後の血糖値が急激に上がる効果を引き起こします。
デンプンであれば食後徐々に消化しながら吸収できるのですが。
このような甘すぎる芋などは迷惑でしかありません。
甘い美味いといえば他の野菜類でも最近は糖度が高いというのが売り物のようになっています。
葉菜類、果菜類などでも糖度が高く、「メロンより糖度が高い」とか「食べるとナシのよう」なんていう紹介が目につきます。
こちらはデンプンの糖化ではなく、品種改良や栽培方法により達成されているようです。
確かに、ニンジンなども甘くできたおかげでこれまで子供には不評だったのが好かれるようになったとかいう話もありますが、別に子供にむりに食べさせることもないでしょう。
とはいえ、これまでの野菜類などでも野生種そのままであったわけではありません。
これまでも数千年に及ぶ品種改良の努力でほとんど食べることもできなかった野生種から徐々に口にできるようにしてきたものです。
それがさらに進んだだけかもしれませんが、しかし糖度の上昇というのは方向性が問題のように感じます。