かつては農家がそれぞれ作ったと言われる「どぶろく」ですが、明治時代に酒税を取るようになりそれが重要な国家収入となったために、自家醸造を厳しく取り締まるようになってしまいました。
世界的にも販売する目的以外の自家醸造をこれほど厳しく制限している国はないようです。
それでも実際には自分で作ってしまおうという人が特に農村部には多いようです。
そういった動きを後押ししているのが、この出版社の農文協、農村漁村文化協会で、関連する出版物を出しています。
本書の中にもこれらの動きを支えてきた、前田俊彦氏、穂積忠彦氏(いずれも故人)の文章も入っていますが、他に多くの人々の実際のどぶろくの作り方を収録しています。
ただし、さすがにそれらの人々は偽名での登場です。
米を使う日本酒風のドブロクの他にも、ワイン、焼酎、ビールまで作ってしまおうという人がいるようで、細かい製造上のコツなども書かれています。
さすがに、麹造りは難しいようで、購入して使うということが多いようです。
ただし、最後に「麹も作ってみよう」ということで、その作り方も書いてありますが、ここは麹屋の出身という永田勝也さんという方が担当です。
これは別に問題はないので本名での登場です。
麹作りはとにかく温度制御が問題ですので、それが詳しく説明してありますが、どの程度できるものでしょうか。
蒸留酒にも挑戦ということですが、これも「蒸留機」作りが難しいようです。
沸騰させ蒸発させる部分は金属で作らねばならず、それを隙間ないようにするのはやはり素人では困難ですので、ここは「板金屋・ブリキ屋さんに頼む」ということです。
まあ蒸留機さえできれば、醪の方はそれほど気にする必要もないので日本酒風のものよりはかえって楽かもしれません。
イモ焼酎の作り方では、「サツマイモは糖分が多いので麹が少なくて済んだ」ということを発見していらっしゃいます。
まあ、これはサツマイモの品種次第と言うことでしょう。
最近の甘いイモであればそれほど糖化酵素は必要ないかもしれません。
なお、「どぶろく特区」についても少し触れてありますが、これは単に製造免許を取りやすくしてあるというだけのものですので、あまりこの本の趣旨とは関係ないように感じました。
まあ、違法状態を避けるのであればこういう方向で進むのでしょうが、制限ばかりが多いようです。
明治時代には国税の何割をも占めたという酒税ですが、今ではごくわずかな額です。
この取りはぐれなどは気にせず、自家醸造くらいは自由にさせれば良いのにとは思います。