爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「地球の歴史(中)生命の登場」鎌田浩毅著

「地球の歴史」三部作の中巻は、40億年前の生物の出現から、古生代末期まで、生物と地球とが相互に影響し合いながら進化していった時代を扱います。

 

 初めの章(第5章)は「地球と生命の相互作用と共進化」とあります。

地球は大きなプラットフォームであり、その上で生命などがちょっとぐらい増えてもあまり地球には影響は無いのではと考えていましたが、生命というものは地球自体に対しても大きな影響を与えるもののようです。

 

その一番最初で最大のものは「光合成生物」です。

生命というもの自体は「自己複製」と「代謝」と言う作用があるかどうかでそれ以外のものと区別されます。

最初の生物は約40億年前にタンパク質と核酸を使って出来上がりました。

ところが、27億年前にはシアノバクテリアという、「光合成」をする生物が現れています。

代謝」と言う作用は、エネルギーを必要としますが、それは光エネルギーと決まったわけではなく、その他のエネルギーを利用するものから始まったのですが、それが光エネルギーつまり太陽光のエネルギーを使うことができるようになったことで、地上に広く広がることができるようになりました。

さらに、光合成で生命に必要な物質を作り出す過程で廃棄物として「酸素」を出すようになります。

 

色々な証拠から、今から30億年より前には大気中や海洋中にはほとんど酸素が無かったことが分かっています。

しかし、その後急激に酸素濃度が上がっていきます。

これはシアノバクテリア光合成によるものでした。

これが地球で最初で最大の「環境汚染」と呼ぶこともできます。

 

酸素濃度が上がっていくと、その酸素を使ってエネルギーを得る「呼吸」ということをする生物も出現します。

これは、他のエネルギー獲得方法と比べても非常に効率的で強力な生命活動です。

このような呼吸をする「好気性生物」はさらに進化の速度を上げて地球上に広がっていきました。

 

地球が巨大な磁石になっているということは、知られていることでしょう。

しかし、地球が当初から磁石であったわけではありません。

27億年前ごろから急激に磁力が強くなったことが分かっています。

その頃に、地球の内部のマントルが密度の違いにより上下に動き出しました。

対流が起こったのですが、その対流は金属鉄も動かしたために磁場が発生しました。

地球ダイナモ理論というものがありますが、いったん対流によって電流が発生すると最初にできた電流が強化され持続するそうです。

この27億年前の地球内部の対流の開始というものは、磁場を発生させたばかりでなく、プレートテクトニクスを発生させ、プルームテクトニクスも引き起こしました。

現在の地球というものを特徴づける働きはここから始まっています。

 

プレートテクトニクスの始まりによって、地上の海水がマントルに引き込まれるということも起きました。

太陽系が誕生した当時、地球に他の天体が衝突して色々な物質が取り込まれたのですが、水分も大量に降り注ぎました。

しかし、最初の頃に存在した海水の量がその後急激に減っていることが分かりました。

行方不明になった水分は地球の奥深くに取り込まれてしまったのです。

この影響で地球内部の温度も下がってきています。

水は核の冷却も進めています。

 

全球凍結という、地上のほぼ全域が凍りついてしまう現象も2回起きています。

生物もほとんどが死滅しますが、ごく一部にのみ生き残ったものが凍結が終わって温度が上昇すると急激に増殖して広まります。

その過程で突然変異も繰り返すために、生物種類も増加します。

5億9000万年前に起きたエディアカラ生物群の繁栄もその一つでした。

これは地上に現れた最初の多細胞生物群と見られるものです。

しかし、様々な種が出現していますが、後の生物の分類には入らない奇妙な生物が多数存在します。

これらの生物種は、その後の変動で絶滅してしまい後の世には残らなかったのでしょう。

エディアカラ生物群の中でもほんの一部だけがその後の大絶滅で生き残り、次の時代にまた大増殖を果たすのでした。

 

生物の大量絶滅は5回起きています。

オルドビス紀デボン紀、ベルム紀、トリアス紀白亜紀のそれぞれ末期に起きました。

その原因は皆同じということではなく、様々ですが急激な低温化や酸素不足といった環境の激変が原因だったようです。

白亜紀末の大量絶滅は、恐竜が全滅したとして有名ですが、これはメキシコ湾に落下した巨大隕石によるものだと確認されています。

ただし、巨大絶滅としては他の4回よりは規模が小さくて済んだそうです。

 

大量絶滅というと怖ろしい話のようですが、その後の爆発的な進化を引き起こす要因ともなっており、生物界に進化を促すことになったようです。

 

非常に面白い地球の歴史です。

下巻も読むことになるでしょう。

 

地球の歴史 中 - 生命の登場 (中公新書)

地球の歴史 中 - 生命の登場 (中公新書)