ネットの急速な広がりでビジネスもネットを意識したものでなければならないかのような時代になっています。
しかしネット特有の法律問題もありますし、またネットに強いと思われる人は逆に通常の法人の関わる法律というものに疎いのかもしれません。
表紙の副題にあるように「知らないではすまされない」というのが企業活動と法律との関係です。
というわけで、弁護士の中野さんが非常に詳しく場面ごとの法律問題を解説しています。
中野さんは弁護士を目指す前の10代の頃からシステム開発やネット輸入といった企業を立ち上げていたのですが、契約ということをほとんど知らないままだったのであっという間につぶれてしまいました。
それを契機に法律を目指し弁護士となって活躍しているということで、こういったことについては熟知している方なのでしょう。
というわけで、本書はネット関係のアイディアだけは豊富にあるが法律関係には詳しくない起業を目指す若者を対象としています。
最初は「まずビジネスモデルを」といったところから。
そして会社を立ち上げるならまず商標権、そして様々なところに引っかかってくる契約問題。
ウェブサービスの最初に決めておくべき「三種の神器」、利用規約、プライバシーポリシー、特定商取引法に基づく表示。
さらにウェブサービスに特有の様々な法律問題。
仮想通貨や未成年相手の対処法、懸賞・景品プレゼントの規定
自社のコンテンツを守るための商標権、特許権。
個人事業主から法人化へのタイミングとメリット。
個人情報保護対策は大丈夫か。
といった点について、かなり具体的な例まであげて説明しています。
ウェブサイトは自分で作る例もあるかもしれませんが、専門業者に作成依頼ということも多いでしょう。
その時に契約書を取り交わしてから始めるのですが、トラブルになることが頻繁にあるようです。
納期遅延というのがよくある例で、受注者側はなるべく余裕を持ちたいということで契約書に納期を書いていない場合も多いそうです。
ここは必ず具体的な日付を明記させるべきでしょう。
また納入物の欠陥は使い始めなければ分からないこともあるので、不具合があった場合に受注者に対応させる必要があり、これを瑕疵担保責任というのですが、これは無期限にはできないので期限を決めて契約するのが一般的です。
しかし、受注者側はできるだけ対応期間を短くしたいと、6か月以内などと法律の規定の1年より短くしてある場合が多いそうで、注意が必要とのことです。
会社が軌道に乗り法人化を目指したり、また社員を雇うといったことにもなるかもしれませんが、人を雇う場合には数々の法律上の規定があり、これらは一通り考えておく必要がありそうです。
そこで漏れがあると罰則がある場合もあり、しっかりとするべきでしょう。
まあ、万に一つもこんな起業をすることはありませんが、知識として見ておくのは面白い。