選挙権の年齢が2016年より18歳に引き下げられました。
この本はその当時、急に早く選挙権を手にすることとなった18歳、19歳の人々に対して選挙とは何か、民主主義とは何かを解説しようと、岩波新書の編集部が様々な人に執筆を依頼して一冊の本としたものです。
第1章は「民主主義のキホン」として、議会のこと、選挙のこと、政治のことなどの解説。
第2章は「選挙・ここがポイント」と題し、現在の政治課題の中でも大きな問題である、憲法改正、景気、少子高齢化社会、地方、医療、安全保障、エネルギーなどを簡単に解説。
第3章は「立ちあがる民主主義」と題し、様々な人に18歳の頃の考え方というものを書いて貰ったものです。
その中には当時18歳の人々もあり、また相当な高齢者の中から、むのたけじ、上野千鶴子、中村桂子、姜尚中、瀬戸内寂聴といった面々も書いています。
なお、むのさんは当時101歳だったとか。
内容は基本中の基本といったところですが、果たして当時すでに選挙権を持っていた20歳以上の人の中でここに書いてあることなどはすべて分かっていると言える人が何人いるでしょうか。
そういう意味ではこの本はすべての国民が読むべきなのかもしれません。
当時青山学院学長の三木義一さんが税金と政治について書いています。
政治を実施するためにはある程度の税金を徴収するのは不可欠なのですが、これを実施するのは国民から反発を食うので政治家はやりたがりません。
増税を打ち出した政治家は必ず選挙で敗けるということになります。
日本でなかなか増税ができないのは、衆議院解散があるために国政選挙が多いからだという説があるそうです。
戦後70年の国政選挙回数は日本は47回ですが、アメリカでも35回、イギリス19回、ドイツ18回だそうです。
このために国民の負担ということを正当に主張することができず、負担を先送りしやすいのだとか。
こういう説は実は国民が賢くないと言っているに等しいことです。
本当にそうでしょうかと結んでいますが、本当にそうでしょう。
アメリカの実情についてのルポで知られる、堤未果さんが医療の本当のところを書いています。
医療費を押し上げているのは少子高齢化で高齢者の医療費がかさむからだと言われていますが、本当の原因は高額な薬と医療機器をアメリカから買わなければならないからだそうです。
1980年代に当時の中曽根総理がレーガン大統領との合意で始めた「MOSS協議(市場志向型分野別協議)」で医薬品と医療機器に関する輸入は事前にアメリカと協議する(実際は指令される)ことになったからです。
ここにもアメリカの圧力があるということでしょう。
なかなかポイントを捉えた分かりやすい内容ですが、果たしてこの本を18歳の日本人の何%が読んだことか。
今からでも遅くない、歳をとっても読んでもためになるかもしれません。