爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「店で提供されているから安全」は大間違い。松永和紀さんが肉の生食・加熱不足の食中毒について解説。

相変わらず肉の生食などによる、主にカンピロバクターの食中毒が多数発生していますが、それについて科学ジャーナリスト松永和紀さんがPresient Onlineで解説記事を書いていました。

その題が「店で提供されているから安全だろうは大間違い」

まさにその通りです。

president.jp

今年6月に愛媛県で起きたカンピロバクター食中毒は、ラーメン店で「鶏レアチャーシュー」を出し、それによって起きたものです。

この店は兵庫県に本部のある全国チェーンのフランチャイズ店で、他の店のメニューにも同様の品が載っているということで大きな問題となりました。

 

しかし危険な食品はこればかりではなく、「レアハンバーグ」や「レア豚カツ」、そして相変わらず「牛レバー生食」などといったメニューが飲食店で供されているようです。

 

カンピロバクター食中毒は年間患者数が2000人程度と言われていますが、これはあくまでも保健所が把握した数であり、実際にはこれの数ケタ上の発生数があると言われています。

ほとんどの患者は症状が下痢・嘔吐で数日で回復するため、病院にも行かない場合が多いのでしょうが、中に一定の割合でギランバレー症候群という神経障害を起こす場合があり、こうなると治療も難しくなります。

 

カンピロバクターは動物の腸管内に生息し、その動物には別に健康に被害もないのですが、食肉とするために屠殺され解体される際に腸管から流れ出して他の部位を汚染します。

鶏の場合は肉も大多数にカンピロバクター汚染があり、およそ70%以上は存在するものと考えられています。

「新鮮な肉だから大丈夫」ということはなく、新鮮なほどカンピロバクターが多く存在すると言えます。

なお、この点について松永さんは「カンピロバクターバイオフィルムを形成し、有酸素下でも簡単には死なない」と書いています。

そうであるならば、かなり長期間生存するのでしょう。

 

鹿児島・宮崎では鶏肉を生食することがあるということは有名かもしれません。

しかしそのために現地では相当な労力を払っていることはあまり知られていないようです。

両県では、鶏肉生食のための基準が定められており、厳しく運用されています。

そして最近ではその運用基準がさらに厳しさを増しているということです。

それだけの努力をするということで、おそらく価格にもかなりコストが付けくわえられているのでしょう。

つまり、それだけ高い鶏肉を食べているということです。

それ以外の地域にはこのような目標基準はありません。

生食のための条件を備えていない肉を平気で食べているということです。

 

飲食店側がこのような点についての知識をあまり持っていないようです。

一般的な大腸菌などの食中毒菌についてはおぼろげながら知っているのかもしれませんが、カンピロバクターというちょっと変わった菌については分かっていないのでしょう。

そのためか、保健所などの担当者がいくら注意しても店側が聞いてくれないという事例は多発しているようです。

 

飲食店で提供される危ない料理も列挙されています。

焼き鳥、から揚げ;加熱不足で中心部が生のままということが多いようですが、それには加熱しすぎると固くなるといった事情があります。

低温調理鶏肉; 肉類の低温調理というのが流行っているようですが、これもちょっとした条件の具合で殺菌温度に到達しません。

牛レバー刺し; これは大きな食中毒事件があったため食品衛生法で提供禁止されているはずですが、「生のレバーとコンロ」を客に提供して「あとは勝手にどうぞ」などと言う店もあるようです。

客は事情も分からずに「生は旨い」と思い込んで食べたがります。

その言い分に黙って従うだけでは店の責任は果たせないでしょう。

 

ジビエ肉の刺身; つい最近、これを提供する店をテレビで紹介する番組があり大きな話題となりました。野生肉の生食などは最も危険なことです。

カンピロバクターどころかもっと危険なウイルスや寄生虫が含まれている危険性が高く、絶対にしてはいけないことでしょう。

 

どうも飲食店もこのような知識を十分には備えていないようです。

「店で提供されているから大丈夫」などとは言えず、生食ばかりでなく「生っぽい」調理なども危ないと思って注意することが大切でしょう。

なお、鳥刺し・鳥タタキなどと出す店に行ってもそれは食べずに焼いてあるものだけを食べれば大丈夫かと思ってもやはりそれも危険でしょう。

そもそもそういった知識がその店には無いということですから。