著者の大野さんは医学や化学なども修めた一方でジャーナリストとしても活躍という方です。
その大野さんが「知の最先端」とも言うべき人達にインタビューしまとめた本です。
その7人は、シーナ・アイエンガー、フランシス・フクヤマ、ダロン・アセモグル、クリス・アンダーソン、クレイトン・クリステンセン、カズオ・イシグロという面々です。
政治・経済・文化など様々な分野について聞いていきます。
相手の専門分野についての話ですが、やはりそれとなく日本についてという方向に持っていき、日本のためのアドバイスのようなものを引き出そうとしているのかもしれません。
なお、第1版出版は2013年、インタビューはその前でしょうから国際情勢や政治など今とはかなり差のある状況かもしれません。
フランシス・フクヤマのインタビューは習近平中国がどうなるか、そして安倍総理が就任すぐという時点でその政治がどうなるかということも触れていますが、それが今どうなったかということは考えに入れなければならないでしょう。
「安倍外交は筋が良い」などと言われるとちょっとどうかと思いますが。
なお、フクヤマはアメリカのシェールガスを「エネルギー革命」と評し、10年経てば中東に依存しなくてよくなるなどとしています。
まあエネルギー専門家でもないでしょうから仕方ないかもしれませんが、海千山千の山師たちに手も無く騙されていたということでしょう。
カズオ・イシグロはまだノーベル文学賞受賞前の時点でしょうか。
その作品「わたしを離さないで」や「日の名残り」などについて、そして日本の記憶や村上春樹との交流などについて聞いています。
イシグロの自分の作品について、「何かを予言しているという誤解は避けたい」と考えているそうです。
SFめいた作品などではそれが何らかの未来を予言しているのではと思われがちだそうですが、そんな気はないという言い訳でしょうか。
他のインタビューでも日本の企業や社会についての分析や助言のようなものも入っています。
それを信じるかどうか、まあ信じたとしてもならどうすればという答えはないようです。