日本は全体としてはすでに人口減少が進んでいますが、まだそれは地方の過疎地域のように思われているのかもしれません。
しかし、東京などの大都市であっても今後は人口が増加するわけではなく徐々に減少し始めます。
さらに高齢化も急激に進むようになりその対策は今からでも考慮しておくべきことかもしれません。
著者は人口減少に備えるべきという話を自治体の長や議員たちに話す機会があったそうですが、露骨に嫌な顔をされたそうです。
まだ備えるどころか考えることすら嫌がられているのが人口減少というものなのでしょう。
しかし大都市ですら近い将来人口減少が始まるのは確実です。
どのように対処するのが一番ふさわしいのでしょうか。
これまでの都市経営は急激な人口集中にやっとの思いで対処してきた高度成長時代の記憶が強すぎ、その頃の感覚からなかなか抜け出すことは難しいようです。
成長型の都市の経営はとにかくインフラ整備に追いまくられていましたが、経済の成長も集中していたために財政の収入も伸び続けていました。
しかし、成長できなくなった時代では「成熟型」の都市として経営していかなければなりません。
著者はそこでは都市経営であっても「投資」の観点を重要視しています。
現状では電力やガスといったエネルギー事業は民間の大企業が担っていますが、かつてはそれを自治体が取り組んだ例もありました。
戦争体制に入ったことでそれらもすべて全国組織とされ、戦後もそのままとなりましたが、今後のエネルギー分散体制が求められる状況では、自治体がエネルギー事業経営を行い、その収入で自治を行うという方向性も考えるべきだということです。
無計画に膨張してきた日本の都市は広がり過ぎている状況にあります。
これが人口減少に向かうとあちこちで空き家や空地が虫食い状に発生します。
そういった状況を「都市のスポンジ化」と呼びます。
本来は「コンパクト化」しなければならないものが、「スポンジ化」してしまうと面積ばかり大きいままで不効率なものとなってしまいます。
スポンジをきれいにたたまないと都市のスムーズな「縮退」はできません。
そこには周到な計画が必要なようです。
これまでにも地方都市で「都市の縮退政策」と見なされるものが実施されたことがありました。
1998年に法令化された中心市街地活性化法によるものがそれにあたり、青森市や富山市、津山市などが取り組みましたが、青森・津山は市の中心の大型商業施設を建てるだけだったので、売り上げも上がらずに結局は撤退という惨憺たる結果となりました。
都市のコンパクト化は中心に商業施設を固めるだけでは実現しません。
富山市は公共交通の充実で都市の循環を良くし、結果的に中心部を活性化するという政策を採り、これまでのところ良い方向に向かっています。
鉄道や路面電車を整備し、そこまでは車で来ても駐車して電車で中心部に向かうという流れを作り出すことで進んでいます。
これで強制的に集落の移転などをすることなく、自発的な移住を促すということで中心部への集中が実現できるということです。
現在は東京一極集中などと言われていますが、その東京もいずれは老人が多くなり人口減少に向かうというのも間違いない話なのでしょう。
その時にどうすれば良いか、今からよく考えておく必要があるのでしょう。