爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

資本家の目的と制御とは何か

雑草Z様のところで(雑草の言葉https://zassou322006.blog.fc2.com/)資本主義とその制御といった話が出ましたが(https://zassou322006.blog.fc2.com/blog-entry-935.html)

、それについて素人ながら考えていくととても先方のコメント欄だけでは足らなくなり、こちらでも書くこととしました。

 

1.資本家の目的とは何か

2.それでもないがしろにしてはいけないものは何か

3.経済のグローバル化という波がやってきた

4.自国内の規制は次々に消し去っていった新自由主義

5.一部の資本家に富が集中しても経済のためにはならないことがようやく露呈

6.ならばどうすればよいのか。「フェアトレード」の可能性

7.数多くの障害の予測

 

 

1.資本家の目的とは何か

 資本家といっても最近では企業経営者と投資家とが分離してしまいどちらを指すのかと言う問題もありそうですが、どうせ企業経営者は投資家には逆らえませんので、併せて資本家としておきます。

 

 以前は「世のため」などとごまかす経営者も居ましたが、最近ではこの本音が生で出てくるようで「株主様の利益を最大限に上げる」というのが主たる資本家の目的ということがはっきりとしています。

 

2.それでもないがしろにしてはいけないものは何か

 資本家が企業利益を最大限に上げようとしても、企業行動の中で忘れてはならないものがあるということは存在します。

企業で働く労働者に十分な給与を与えること、長時間労働をさせることなく休日も与えること、

企業活動が環境を破壊するようなことをしないこと、

地域社会や国家が活動するための費用を負担すること。

といったことは、企業も社会の一員である以上は守るべきものです。

こういったものを「社会正義のための行動」とまとめておきます。

しかし、歴史的にはこういったことを顧みることなく行動していたのが資本家でした。

それに対し、国家が徐々に制限を掛け費用負担を強制していったのが資本主義の歴史です。

ただし、それは国によってかなりの差があり、福祉国家と言われる国々ではより制限が強く、そうでない国では野放しという状態でした。

それでも国ごとに独立した経済環境が守られていた時期にはその差はさほど問題にはならなかったのです。

 

3.経済のグローバル化という波がやってきた

 ところが、運輸や交通、通信の技術が格段に進歩し、そのコストが激減する中で「経済のグローバル化」が進行していきます。

それまでは地球の裏側の製品が海を越えてやってきたらとんでもない値段になり、それこそ「舶来の高級品」となったものが、食品などの安価なものでも十分に安いコストで運べるようになりました。

 すると、運送費以外のコストを削減できれば長距離輸送をしても競争力が落ちないということになっていきます。

 そこで悪だくみをしたのが資本家たちです。

社会発展が未成熟で労働者賃金も格安、環境対策も野放しといった新興国に製造工場を持っていけば格安の製品が製造でき、それを輸送してきて売っても十分安く販売できるということになりました。

 

さらにそういった新興国では政治の統制も未発達、トップに賄賂でも渡せば何でもやり放題、その国での納税も安く済ませるという資本家にとっての好条件がそろっていました。

 

邪魔になるのが、各国が実施していた関税による貿易制限や、その他の貿易障壁でした。

そこで、自由貿易こそが望むべき条件であるという宣伝を繰り返し、「自由こそ最良」というイメージとも結びつけて「保護貿易は悪」という価値観を作り出しました。

 

4.自国内の規制は次々に消し去っていった新自由主義

 製造業の移出を手掛けるとともに、自国内での規制をできるだけ消していこうというのが新自由主義であり、1980年代にアメリカのレーガン、イギリスのサッチャー、日本の中曽根などが推し進めていきました。

日本では、規制を行っていたのが官僚であり彼らが規制によって潤っていた既得権益層と結託していたという事実も間違いなく存在したために、それを除くことが善であるというイメージが広がりました。

しかし実態は規制緩和で潤う層とさらに結託していったのが官僚であり、単に権益を受ける層が移動しただけのようです。

 

これは日本では正規雇用労働者の激減と言う形ではっきりと表れており、否定のしようがありません。

 

さらに、企業の法人税、高額所得者の所得税の軽減も海外とのバランスなどと言う名目で進められ、正当な社会負担すら逃れてしまう企業、高額所得者が増加しました。

 

5.一部の資本家に富が集中しても経済のためにはならないことがようやく露呈

 このような状況は特にアメリカで顕著であり、ごく一部の富裕層に富が集中するということが明白となり、大きな社会問題となっています。

 これをどうにかしなければならないのに、それを擁護したり別の標的を作ってそちらに攻撃を集中させてみたりと、悪あがきが続いています。

 

日本でも格差拡大という紛れもない現象が誰の眼にも明らかとなっているのに、論点すり替えや標的ずらしという策謀が次々と現れています。

 

6.ならばどうすればよいのか。「フェアトレード」の可能性

 これが一番問題になるところです。

そこで参考になるのが現在はまだNGOなどで細々と実施されている「フェアトレード運動」です。

どうも今はまだ「特にひどい事例」だけを標的としているのではないかと思いますが、これをより広く捉えていくことが必要ではないかと考えます。

しかも、それを「各国政府」が主体となって実施していく。

具体的に言えば、「奴隷制」とまで言われるような状況は言うまでもなく、「かなり安い給与」で労働者を働かせて作られているような製品には高関税(懲罰的関税)を課すこと。

さらに、環境汚染などの対策を全くとらずに操業しているような企業にも同様の対処をすること。

他にも「社会正義のための行動」を取らない企業の製品は事実上ボイコットするということを、世界各国で実施する必要があるということです。

 

「脱炭素」とやらの対策には非常に厳しいことを言っているのですから、それ以上に必要性が高いと見られるこういった問題には反対や異論のあるはずもないでしょう。

 

7.数多くの障害の予測

 しかし、当然ながらこんなことが実行できるとはほとんど考えられません。

各国の政府も口では何と言ってもほぼ資本家たちの言うがままですから、この施策を考慮する姿勢すら見せないでしょう。

 また、製造業の請負で繁栄を手にした中国や諸国も決して受け入れるはずもなく、「内政干渉だ」というお得意の反発を繰り返すばかりだということは明らかです。

それでも、「世界中がフェア」になればどれだけ良い世界となることか。