もう亡くなられて10年以上も経つのかというのが、意外なほどの思いがする劇作家、小説家の井上ひさしさんが、初めて出版した小説がこの「ブンとフン」だそうです。
もともとはミュージカルとして構成されていたということで、所々で登場人物が歌うという場面もあり、またその後著者によって劇化された作品も出されて上演されたということです。
この小説については、作者自身がその後語っているのは「自分が書いてきた小説のなかでも一番馬鹿馬鹿しいものだ」ということで、かなり実験的な構成と内容にしたことをそう語っているのかもしれません。
しかし、物語の中から感じられる雰囲気は井上さんの他の作品に通じるようなものかと思います。
この小説版では結末は日本国民全員が泥棒になってしまうということになるのですが、その後書かれた戯曲版では結末を変えているそうです。
これについても作者自身が後に語っているように、最初に小説を書いた時代と、その後の社会の雰囲気の差がそうさせたということです。
軽い内容の本ですが、周辺まで見ていくと重いものが隠れているのかもしれません。