グリルスさんは「まえがき」を書いていますが、全部を書いたわけではないようで、タイムズ社により書かれたということでしょうか。
ほとんど生還の可能性もないところから、超人的な行動をして生き残り帰ってきた人という話は時々聞きますが、この本はそういった人々のサバイバルをコンパクトにまとめています。
色々な死地というものがあるのですが、「極限」「脱獄」「戦争」「難破」「誘拐・人質」と、かなり事情が異なるものを取り上げています。
「脱獄」がなんでサバイバルなのかとも思いますが、その行為の正当性はともかく、やはりやっていることはすごいものです。
個々の逸話はけっこう有名なものもあり、ハドソン川の奇跡という、2009年に起きたニューヨークでのUS航空1549便の墜落事件は印象的なものでしたし、「パピヨン」「大脱走」といった、映画にもなった脱獄、脱出の話もあります。
また、「バウンティ号の叛乱」と言う事件も有名ですが、この本に掲載されているのはその叛乱でボートに乗せられて大洋に流されたブライ船長たちが生き延びるということに着目しています。
ブライ船長たちは6700kmを小さなボートで乗り切り、18人がオランダ領ティモールにたどり着きました。
その後、ブライは海軍に復帰し最後はオーストラリアニューサウスウェールズ州総督となり中将の位にまで昇進したそうです。
1923年9月1日、横浜港を出港しようとしていた遠洋定期船エンプレス・オブ・
オーストラリア号はその直前に大地震に見舞われました。
港は火災が発生したのですが、船はなんとか燃え移らず済みました。
すぐに港を離れることなく、岸壁の生存者を救出して船に移し、2000人の命を救ったそうです。
この話は知らなかった。
一番長い距離を歩きぬいて脱出したのは、ドイツ人コルネリウス・ロストでしょうか。
ドイツ軍が敗北し兵士はソ連に捕らえられ、シベリアに送られました。
そこから脱走したのですが、ほとんど徒歩であちこちをさまよい、結局は1万3000キロを歩き通して3年かかってイランに入り帰国できたそうです。
頑健な体と強い意志、そしていろいろなサバイバル技術がなければできないことだったのでしょう。
私にはこんなことはできません。すぐにあきらめてしまいそうです。