もう今では遠い昔のようにすら感じますが、東日本大震災によって福島第一原発事故が発生し、大きな被害が出たあとには「原発廃止論」が広く語られました。
そして、その中で衝撃的だったのは元首相の小泉純一郎氏が「原発廃止論」を唱えたことでした。
同様に原発廃止を訴えた元総理、細川護熙氏が東京都知事選に出馬、それを小泉が支持するということになったのですが、当選には至りませんでした。
その後は、原発廃止論も先細り広い支持は無くなったようです。
ただし、原発の再稼働は思ったほどは進まず現在も稼働している原発はほとんどないというのは、少しは運動の成果があったということなのでしょうか。
この本は、小泉がその発言をしてそれを毎日新聞で取り上げたのが2013年8月、大きな話題となった後のその年の12月に書かれ、翌年1月に出版されたものです。
小泉元首相の発言録、毎日新聞で取り上げた山田孝男編集委員との対談、そしてその当時にいろいろと発言をしていた、細川護熙氏、城南信用金庫理事長の吉原毅氏、元三菱銀行取締役の末吉竹二郎氏たちのインタビューをまとめています。
小泉氏の反原発論は、直接の危険性というよりは放射性廃棄物の処分ができないことを主な根拠としているようです。
小泉氏は世界で唯一本格建設されたフィンランドの最終処分場、オンカロを訪れ、その経験から日本では最終処分ができないということ、そしてだからこそ早く原発は廃止することが必要という態度に変化しました。
その頃は、(今でもか)「原発反対派は左翼」という言われ方をしていましたが、小泉氏は政治的には一貫して保守、それでも原発には反対ということで、右も左も関係ないという立場だったそうです。
その後の経過は情けなくなるほどのもので、「再生エネルギー開発」も原発廃止のためではなく温暖化防止という以前の屁理屈に戻ってしまいました。
百年先を考えることすらできない国民に、10万年も続くという放射性廃棄物の管理などできるわけもないでしょう。