政治がどうしても指導者によって大きく動かされている以上、その指導者を暴力で消し去り状況を変えようという欲望にかられる人が出るのは仕方のないことなのでしょう。
歴史をみても多くの政治指導者が暗殺によって葬られました。
それは決して過去だけのものではなく、現在でも続いています。
この本では、歴史上有名な暗殺事件について、被害者と加害者それぞれの詳しい伝記を並べ、そのような暗殺が起きた背景、状況を描いています。
この上巻で取り上げられているのは、ユリウス・カエサル、アンリ3世、マクシミリアン・ド・ロベスピエール、エイブラハム・リンカーン、マクシミリアン・フォン・ハプスブルク、アレクサンドル2世、オーストリア皇后エリーザベト、オーストリア皇太子フランツ・フェルディナンドです。
この中で暗殺されたことが有名であるのは、カエサル、リンカーン、フランツ・フェルディナンドでしょうか。
フランス王アンリ3世、フランス革命のロベスピエールは名前は知っているもののその死の状況は不案内でしたし、メキシコ皇帝フォン・ハプスブルク、エリーザベトは名前も知りませんでした。
古代からあったことでしょうが、やはり拳銃や爆弾といった武器が発達したころには、頻繁に国王などの暗殺が起きていたようです。
ロシア皇帝アレクサンドル2世は、1881年に革命家集団に暗殺されますが、ロシアも1870年代までは穏やかだったようです。
しかし、共産主義を目指す活動家が出現し、皇帝だけでなく政府要人を次々と暗殺するようになり、アレクサンドル2世も6回の暗殺未遂事件は何とか切り抜けたものの7回目に命を失いました。
暗殺者の生い立ちから心理まで詳述してあるのはこの本の特徴でしょう。
どんどんと悪い状況に追い込まれ、悪の象徴としか見えなくなった国王などを暗殺してやろうというところまで来てしまう、それは運命というものでしょうか。
一人で実行ということは珍しく、やはり仲間数人で犯行に走るのですが、その内の大部分のメンバーはいざとなると怖気づいて何もできず、わずかな者が実行するというのもよくある話のようです。
そういった心理はなかなか想像しづらいのですが、そうなのでしょう。
多くの文学作品に取り上げられているのも分かる気がします。
まあ、「面白かった」とは言いづらい本でした。