仮想通貨、最近は「暗号資産」と呼ぶようですが、ビットコインなど様々なものがあるようです。
2017年に大きな話題となり、値上がりが期待されて高騰するバブル状態となりましたが、その後は落ち着いたかに見えます。
著者の野口さんは、東大工学部の出身ですがその後大蔵省入省、さらにイェール大学で経済学博士号を取り大学教授をされました。
この仮想通貨についての解説も詳細でおそらくかなり正確であろうと思いますが、よくは分かりません。
2017年の価格高騰は、明らかに投機によって引き起こされたバブルだったのですが、それは仮想通貨にとっては良いことではなく、本来は送金用の手段である仮想通貨が価格が上がることによって送金手数料も上がってしまうという、まずいことになったようです。
バブルが消え価格が落ち着くことで本来の送金手段としての効用が高くなりました。
ビットコインというものは、どこかの会社が開発したというものではなく技術者の有志が集まってできあがったものです。
そして、そこには「取引所」というものが置かれ運営にあたるのですが、取引所にビットコインを預けたままにするという人があり、それは本来の使用法とは異なるようです。
チェーンの分岐(フォーク)というものが必ず起きるのですが、そのままでは二重払になりますので、それを何とか収めなければなりません。
そこで出てくるのがフォークの長い方を取る(しかし短い方の記録も残る)といったものですが、この辺の話もかなり複雑なものです。
このように、送金用手段としての仮想通貨でしたが、間違った期待から投機資金が入り込みバブルとなって価格高騰してしまいました。
これでは送金用としては使いづらくなってしまいましたが、仮想通貨の先物取引というものが始まり、その効果でバブルも成り立たなくなったそうです。
この辺の事情も説明してありますがよく分からないところです。
仮想通貨での事故は何回か起きていますが、ブロックチェーンというものの有効性に疑問を持たせるようなものではなく、取引所の管理体制がずさんだったために起きたもののようです。
現実通貨のたとえで言えば、「現金輸送車がギャングに襲われた」ようなもので、だからといって日本銀行券の価値に問題はないのです。
ただし、日本銀行券も偽札が大量に出回ればその価値が損なわれます。
仮想通貨にまつわる事件も、その偽札のようなものはまだ起きていません。
それでも量子コンピュータのような超高性能コンピュータが現実化し、それが仮想通貨の暗号解読をやってしまうようなことになると、仮想通貨の体制も崩れることになるかも知れません。
このような仮想通貨などのネット技術の開発には、中国とドイツが急激に進歩しているようです。
このまま行けば世界の経済を中国などの技術が席巻することになるかも知れません。
著者は日本も大学などの体制を変え、これらの技術の研究開発に大きな資源を注ぎ込まなければならないと強調しています。
ただし、ここで引き合いに出されているのが「農学部」で、各国立大学には必ず農学部がありそこに大学予算のかなりの割合が流れていることを批判しています。
ここはちょっと言い過ぎでは。
私自身が農学部出身であることもありますが、儲かれば良いのかとは言えないと思いますが。
そもそも研究費が全体としてまったく少ない、しかもどんどんと減らされているというのが大問題であり、その奪い合いで相手を批判し合うなどというのは間違いでしょう。
それにしても、中国のIT技術の進歩は恐ろしいほどですが、そこに個人の人権を重んじる基盤が無いことがさらに恐ろしい未来を予感させます。
個人の顔認証システムの発展には中国企業が特に先進技術を持っているのですが、それが「監視カメラ」と結びついて街角での監視力の強化につながっています。
人権重視の感覚の薄い中国ではこのようなこともやり放題で効率化が図られています。
さらに、中国軍はドローンを使った攻撃技術もAI利用で高度化しているようです。
多数のドローンで同時に空母などを攻撃するということが可能になれば、非常に安価な攻撃態勢確立となり、これまでの軍事技術も一変させることになります。
アメリカではこういった技術の開発力が落ちているので、軍事方面でも差が拡大する可能性もでてきます。
仮想通貨の発行というものを、メガバンクが行おうという動きも出ているようです。
ただし、制度的に高いハードルがあり簡単には行かないでしょうが、それが出来た場合の効果は大きなものがあります。
現在の送金事情というものは、特に海外への送金は難しいものであり、例えば日本からアメリカへ50万円送金しようという場合でも、手数料などで1万3500円かかります。
さらに日数も1週間近くかかるということで、ビットコインなら瞬時に手数料70円で送ることができるという、非常に大きな変化になります。
しかも、日本からアメリカへという状況は他の国へよりは有利な場合であり、国によっては多額の送金は不可能という場合もまだかなり残っています。
特に、銀行の支店網などが成立していない東南アジアなどの国への送金は、ビットコインが使えるようになれば劇的に改善でき、経済活動が活発になるでしょう。
仮想通貨では、その基盤となる技術「ブロックチェーン」というものが非常に重要です。
これは、電子情報である資金のやり取りについて、絶対に後からの改竄をできないようにするというもので、これがあるからこそ仮想通貨の利用が安心してできるのですが、この技術はそれ以外の用途も非常に広いものがあります。
「公文書」への利用を行っていけば、あの「モリカケ事件」で起きたような官僚による公文書改ざんの危険性も防ぐことができます。
現に、エストニアやイギリスでは政府の公文書管理にブロックチェーン技術が利用されるようになっているそうです。
まあ、政府が自らそれに手を付ける可能性は日本では絶対にないでしょうが。
さらに、現在は「公証人」が介在しなければできないような遺言証書、不動産所有権登録、知的財産登録といった重要な情報についても、ブロックチェーンを利用することによって公証人は不要になるそうです。
しかし、公証人は裁判官や検察官が退職後の金儲けのための大事な職業であり、2018年の時点で全国に497人の公証人がおり、そこに年間約50億円の認証手数料が入るので一人あたり平均1000万円の収入になるそうです。
これも、公証人廃止には進みそうもありません。
しかし、このような可能性があるということは、広く知られるようにしておくべきでしょう。
「仮想通貨」など、極めて胡散臭いものだという認識でしたが、やはり相当高度な技術だということです。