爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「世界〈経済〉全史」宮崎正勝著

世界史というものを「経済」から見ればどうなるか。

それをたどっていくと、51個の転換点というものが見つかるそうです。

 

言われてみれば、確かにそうだなと納得です。

これは覚えておくとためになりそうです。

 

「貨幣」というものが経済の血液とも言うべき重要な役割を果たしてきました。

最初は物々交換が行われていたのでしょうが、徐々に統一された貨幣というものが生まれてきます。

それが多くの文明で「銀」だったようです。

ただし、初期はそれも「銀の地金」として使われていたのですが、それでは一々銀かどうかを確かめてそのうえで重さを計るという作業が必要でした。

それを解決する策が「コイン」の発明だったそうです。

それが前7世紀の現在のトルコ西部にあったリディア王国のことでした。

それを最初に行ったと言われているのがリディア王クロイソスということです。

なお、現在の英語でも「rich as Croesus」という言葉が残っているそうです。

 

新大陸が発見されそれをヨーロッパ諸国が領有し大西洋を取り巻く国々を結ぶ大航海時代が始まったことで、資本主義というものも生まれたということができます。

砂糖、綿花などを新大陸で生産しそれをヨーロッパに持ち込むことで生産と流通の仕組みとなりました。

資本主義とは土地と労働力の商品化を基礎とし、「貨幣を働かせて最大利潤を上げる貨幣の自己増殖の仕組み」と言うことができます。

それがこの時点で走り始めました。

 

名誉革命以降、イギリスはフランスとの長い戦争の時代となりましたが、その戦費の調達で非常に苦労しました。

そのために作られたのが「国債」でした。

それまでは国王が直接商人などから借金をしていましたが、その返済はしばしば滞り、王の借金は非常に信用度の低いものでした。

しかし、国王ではなく議会が債務返済を保証するということになり、国債の信用度は上昇し、貨幣と同様に扱われるようになりました。

ただし、国債が発行されるようになってもそれを誰が買うかは大問題でした。

そこで作られたのが「南海会社」というものでした。

これは経営実態がほとんど無いというもので、単に国債を引き受けるという機能だけのものでした。

そしてそれが「南海泡沫事件」の引き金になります。

国債をどんどんと買い入れるだけの南海会社の株は上昇したのですが、やがてそのバブルは消滅し多くの人々が財産を失いました。

その中にはニュートンもいて2万ポンドの大損をしたそうです。

なお、ヘンデルも買ったのですが直感の鋭い彼は危ういところで売り抜けて大もうけをしたということです。

 

イギリスは新大陸の覇権をかけてフランスと戦い抜き、北アメリカの支配権を確立しました。

しかし、その代償が1億3000万ポンドにも及ぶ巨額の赤字国債でした。

それを北アメリカ植民地への課税で取ろうとしたのがアメリカ独立戦争の原因となりました。

 

19世紀のイギリスは世界の土地と人口の4分の1を支配する覇権国となりましたが、経済の根本となる銀がどんどんと減っていきました。

その銀不足を解消するためにでっち上げられたのが「金本位制」でした。

しかも、実際に金を流通させるのではなく、いつでも金と交換できるという紙幣を大量に発行するという手法でした。

これが4000年続いた銀貨の時代を紙幣の時代へと転換させる金融市場の大変革でした。

これにドイツが追従し、さらにアメリカや日本も続きました。

しかし、これまでに世界で掘り出された金はすべて集めても水泳プールの4杯分しかないということです。

その当時でも発行されたポンド紙幣をすべて金と交換することなど不可能であり、もともと交換するつもりもなかったようです。

それで「ポンド」が世界を動かす時代を作り出しました。

 

なお、その後「米ドル」に変わった主軸通貨の金との交換が停止されたのが1971年にニクソン大統領によって実施された政策で、この結果ニクソンショックが起こりました。

これでブレトンウッズ体制が終焉したことになります。

 

経済の眼で世界史を見直すというのも面白い観点だと思いました。

 

世界〈経済〉全史 「51の転換点」で現在と未来が読み解ける

世界〈経済〉全史 「51の転換点」で現在と未来が読み解ける

  • 作者:宮崎 正勝
  • 発売日: 2017/07/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)