爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「日米地位協定入門」前泊博盛著

最近またも在日米軍の兵士の関係する事件が相次いでいます。

そこで必ず出てくるのが「日米地位協定」というものであり、そこに問題があるということもなんとなくは感じていました。

図書館でたまたまこの本を見かけ、きちんと内容を知っておく必要もあるかと思い借りてきて読みましたが、

「想像以上のひどさだった」

 

日本というものが実質的にはアメリカの属国同様ではないかといった感覚はずっと感じていましたが、その根源はここにあったと言えるようです。

現在では、中国や韓国の肩を持ったような発言をしただけで「売国奴」呼ばわりをする輩がいますが、この日米地位協定を作り出し守ってきた連中こそその名にふさわしいのは確かでしょう。

 

編著者の前泊さんは、琉球新報社に勤務したあと、沖縄国際大学教授に転じましたが、その大学に2004年に米軍のヘリが墜落した事故がありました。

その時、米軍は墜落したヘリの周辺を閉鎖し日本の警察どころか大学関係者も立入禁止として事故機を隠蔽しました。

これも地位協定のせいです。

 

沖縄だけがこういった扱いをされているように感じますが、実は協定は別に沖縄だけを特別扱いしてはいません。日本全土が同様の扱いをされることになっています。

もしも、東大にオスプレイが墜落したら米軍は同様の措置を取ることでしょう。

 

このような取り決めが結ばれているような主権国というのは、ありえません。属国か植民地であるというのが実状でしょう。

沖縄だけが基地が集中していると言われていますが、東京周辺にも横田基地横須賀基地と大規模な米軍基地があり、これは「日本政府を監視している」も同然なのです。

 

そもそも、サンフランシスコ講和条約を結んで日本占領が終了した時に、占領軍も退去するのが当然です。しかし、その講和条約と同時に日米安保条約が結ばれて米軍がそのまま日本に留まることを受け入れさせました。

そして、その時に細部を定めるとして「日米行政協定」なるものを締結しました。

しかし、これが実際は米軍がこれまで通りに日本全土を自由に使用するための方策を定めたものだったのです。

それを改定したものが「日米地位協定」ということです。

 

一般的に考えれば、講和条約、安保条約、行政協定が同時に結ばれたとしても、講和条約がもっとも上位であり、安保、行政協定とその位置は下がるはずですが、実際は行政協定が最も重要であったということになります。

 

日本は戦争で負けたからこのような扱いをされても仕方がないということを論じる人もいます。

しかし、同様に敗戦したドイツやイタリアでもこのような屈辱的な状況ではありません。

両国とも国内法が優先して適用され、米軍のやりたい放題ではありません。

ごく最近敗戦したイラクでも、占領終結時には米軍を残さずに退去させました。

フィリピンでも米軍基地を廃止しましたがそれで中国が進出してきたというのは根拠のないプロパガンダのようです。

 

地位協定にはさらにその解釈マニュアルもあるようですが、外務省機密文書で外部には目に触れないようにされているということです。

琉球新報社が入手し発表したのですが、現代でも最悪の不平等条約の裏側を示しています。

読めば読むほど日本の現状というものについて驚きと怒りがこみ上げるものでした。

 

本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 「戦後再発見」双書

本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 「戦後再発見」双書

 

 このような日米関係に浸りきっている安倍首相が主張する日米同盟強化や相互安全保障、集団的自衛権などというものがどのようなものかというのは明らかでしょう。

さらに米に対する隷属を強めるだけのようです。