今ではほとんど英語とのかかわりも無くなってしまいましたが、一時は結構必要である時期もあり、勉強したこともありました。この本はその当時に読んだ中の一冊です。
40年も前の出版の本ですが、当時東京外国語大学教授で翻訳本も多数出版していた著者が様々な誤訳・問題訳の例をあげて解説しています。
昔を振り返れば、大学から会社に入り、当初は工場の現場勤務だったのですがその後研究所勤務となりました。そこでは主に英語の海外論文の調査なども日常業務でしたし、自分で論文執筆ということも数回はやりましたので、英語の読み書き能力と言うのは必須でした。しかし現状はお寒いものでほとんど英語能力が付かないままだったので苦労したものです。
この本は科学技術向けの英語というわけではなく、あくまでも文学的な英語の翻訳能力というものを扱っていますが、基本にあるものは同じですので参考にさせてもらいました。
本書の最初は欠陥訳本の紹介と言うことで、かなりひどい例を取り上げています。大学生でも恥ずかしくて出せない様な直訳(それも間違った)もので、一応訳者の名前はイニシャルだけにしてありますが訳本は何かは明らかですので誰の訳かというのも調べれば分かったのでしょう。他人事ながら問題が起こらなかったかどうか心配です。
欠陥翻訳本の見分け方というのは、現在でも十分に成立しそうです。
小説などの文学本なのに注釈がやたら入っているもの。技術本ではあるまいし訳文の中で処理すべきと言うことです。
小説では、会話を見れば分かりやすいようです。会話が上手く書けている本は他もだいたいまともに訳してあるということです。
意外なところでは、数字に注意するということがあります。いい加減な翻訳をした本というのは、数字も変な取り違えをしてしまっているものがあり、例えば「1年360日」とか「forty acres」をキチンと「五十町」と訳したものもあったそうです。
翻訳の技術向上へのトレーニング法と言うのも様々取り上げてられていますが、英語の知識を増すのは当然として、日本語の表現を向上させろという指摘ももっともなものでした。この辺の基礎がなっていないのに平気で翻訳家として訳本を出版している人が多いとか。
かなり昔の本ですが、現在の翻訳事情はどうなのでしょう。大して変わっていないようにも思えます。