爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「モンティ・パイソン大全」須田泰成著

空飛ぶモンティ・パイソン」(Monty Python’s Flying Circus)は1969年から74年までの間、イギリスのBBCで放送されたコメディ番組で、その後日本でも何回かにわたり放送されたので良く見たものです。

その内容は殺人やセックス、政治や宗教の嘲笑、他民族の侮蔑など非常に問題を抱えたものであり、放送当時もBBCとは相当な軋轢があったようです。

この大きなテーマを書いた須田さんはモンティ・パイソン研究では相当な経歴を持つコメディ研究家にして作家であり、イギリスのコメディーライター協会の会員でもあるということです。

モンティパイソンのコメディにはまったくイギリスの事情が分からない日本人でも笑えるものもある一方、どこがおかしいのかさっぱり分からないというものもあり、「高度な知識を持っていないと本当の面白さは分からない」という伝説も生まれてしまいました。しかし、イギリスに渡りコメディー界にまで足を踏み入れた著者から見ると、コメディーには地域的、時代的にその場でしか分からないものを取り入れる場合があり、そういったところはその当時のイギリスの雰囲気に通じた人でなければなかなか理解しがたいところだそうで、そこまで全部理解するのは不可能かも知れません。

そんなわけで、放送されたすべての番組の解説をしてしまったというすごい本ですが、たとえば第1シリーズ第2話「セックスと暴力」ではイギリスの労働者階級の親子の争いというテーマでありながら、労働者風に見える父親は実は上流階級で息子はロンドンを離れ炭鉱夫となるものの、父親がしゃべる言葉は炭鉱地帯の訛りであるといったところは英語の方言にも通じないと分からない点でしょう。
またフランス人は色情魔、アメリカ人は金儲けばかりといった人種偏見にもそれらしい訛りでしゃべらせているので、当時のイギリス人であれば解説をしなくても笑えるところなんでしょうが、外国人にとっては解説されてもなかなか腑に落ちないかもしれません。

ジョン・クリーズ(最初のショッキングな「バカ歩き」をした人)が似たようなシチュエーションばかりで飽きてしまい、脱退してしまった第4シリーズをもって終了してしまいましたが、当然のことながらそれ以降のコメディには相当な影響を与えています。また、かなり過激なものであっても、「すでにモンティパイソンでやった」と言うのは強い免罪符になってしまい、あとの人がやり易い(一面ではやりにくい)ということもあったようです。

昔日本で最初にこの番組が流れた頃は私もちょうど大学生だったので衝撃は受けたものの楽しめました。一つの時代だったのかも知れません。