爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「人類進化99の謎」河合信和著

著者は新聞社出身の科学ジャーナリストということですが、こうった大きなテーマを手際よく説明するには専門の研究者よりふさわしいのかもしれません。

700万年前とも言われているサヘラントロプシス・チャデンシスの出現から、ホモ属の出現、そして現生人類のホモ・サピエンスに至るまで広く解説されていますが、今を去ること40年以上前の私の高校時代に生物で学んだような知識とはまったく変わってきています。
辛うじて聞いたことがあったのは、ホモ・エレクトスとホモ・ネアンデルターレス程度で、ホモ・ハビリスアウストラロピテクスに属名が変わっているし、その前に出現しているものは属名からして馴染みの無いものばかりでした。
パラントロプスとか、ケニアントロプスっていったい何なんだ。

しかし、とにかく直立二足歩行というものを始めてから進化を始めたのですが石器というものを最初から使っていたわけではなく、その頃は食べられるものも限られていたようです。死んだ動物の肉を食べるにしても石器が無ければ肉を剥がしたり骨を割ると言うこともできず、十分には利用できなかったとか。
石器が一緒に見つかったのはようやく250万年前のアウストラロピテクス・ガルヒとか。そこに至って初めて肉を食べることができるようになり、その栄養で脳の進化が進んだと言うことです。とはいってもそのような石器では狩猟をするということは不可能だったとか。せいぜい他の食肉動物の食べ残しをあさっていた程度だったようです。

ネアンデルタール人というのは50万年前頃に現生人類と別れて進化したようですが、化石で確認できるのは20万年前から2万8000年前までです。意外に近い頃まで共存していたというのも驚きです。直接、現生人類と闘争をしたと言う証拠は無いようですが、限られた資源を争ううちに滅んだようです。

現生人類と同じと見なせる先祖が成立したのは20万年前のアフリカということです。それから8万年前になりアフリカから全世界に広がっていきました。その頃は体色は黒かったはずですので、白人など肌の色が抜けていったのはその後のことです。「人種」というのは現代では意味を認められなくなっているということですが、様々な外見的な特徴ができたのもそれからのわずかな期間だったということです。
これからあとを考えると、人類の何らかのグループが独自の進化をするということは現代以降ではもはやあり得なくなっているので、人種差が広がるということはなく、混血が進み一体化するという可能性が強いようです。

人類がここまで人口を増やしてきたのにはいくつかの契機がありましたが、最初は出アフリカ、そして新大陸への進出、農耕の開始、最後に産業革命で農業生産力の爆発的増加というところだったようです。もはや袋小路というのがふさわしいようにも見えます。