爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「脳は楽観的に考える」ターリ・シャーロット著

ロンドン大学の研究員で心理学と神経科学が専門のターリさんが、人間はなぜか楽観的に考えてしまうと言う点についてかなり学術的に書いています。

社会がどうなるかということについてはかなり正確な予想を立てられる人でも、自分のこととなるとその予想よりは楽観的に考えてしまうことが多いそうです。何年か後までに自分が病気になる確率、離婚してしまう確率、失業してしまう確立というものは、社会全般の確率というものは知ることができますが、自分自身がそうなるかについては相当低い可能性しか予想しないようです。

オバマがアメリカ大統領に就任する際はアメリカ人の相当多数が国の状況が何から何まで良くなるという楽観的な予想に包まれました。あまり期待されすぎても困ったもので、1期目の終わりには相当支持率は落ちましたし、2期目もこれから終わりに向けてどんどん下がる一方でしょう。
戦前の大恐慌のときにも、シャーリーテンプルと言う大きな存在が出てきました。状況が苦しいほど、何かに期待をかけたいと言う人々の想いが一人のスターを作り出してしまうそうです。

一般の人々が正確な予想よりも楽観側に傾いてしまうのと逆なのが、うつ病患者だそうです。脳の働きを調べるとその正反対の作用と言うのが分かるようです。重いうつ病患者は悲観的に過ぎるのですが、軽い患者の場合は実は将来を正確に捉えられているだけなのかもしれません。正常人というのがかえって楽観的過ぎると言うことなのかもしれないようです。

なにか楽しみなことを色々の中から選択すると言うことは誰にでもあることですが、(休暇の旅行の行き先とか、ちょっと贅沢な買い物とか)そこでの選択と言うものの後では選択したものがより良く感じられるように、人間の心理と言うものはできているようです。一度決めてしまったら大体のことはもはや取り返しのつかないことなので、あとになってあっちの方が良かったという後悔はしてもしょうがないのですが、そのような事情も正当化してしまうように心理と言うものは働くということです。ちょっと本当かいなと思わせる内容で、そうでない人も居るようですが。

しかし、著者は心理学などの研究にも神経科学的な手法を使っているようです。日本の心理学ではこのようなアプローチはされているのでしょうか。