いろいろな種類の「食べ放題」が人気ですが、そこで「元を取ろう」としても無理だよという話をデータサイエンティストという松本健太郎さんがプレジデントオンラインに書いています。
とはいえ、この文章はよくあるような食品流通の裏情報で、調達コストが安いとかそういった話をしているわけではなく、行動経済学の観点から心理的に「元を取らなければいけない」という強迫観念にとらわれるのが人間の哀しさだということを述べています。
「食べ放題」というサービスが日本で始まったのは、帝国ホテルで1958年に北欧式ビュッフェ「スモーガスボード」を「バイキング」という名前で始めたのが最初だそうです。
なお、もちろんバイキングという名称はこの時単に北欧ということから連想してつけられたもので、外国に行ったらまったく通じません。
大卒初任給12800円の時代にディナーで1600円という高い値段をつけたのですが、話題を呼び全国に広がったとか。
ホテルのバイキング食べ放題などで、しかめつらで食べている人はほとんど見かけず、誰もが幸せそうな顔をしているそうです。
これを「気分一致効果」というそうです。
なぜ食べ放題に来ると、みんな楽しそうなのでしょうか。それはおそらく心理効果の1つ「気分一致効果」の影響だと思われます。美味しい料理をたらふく食べて、食欲が充たされているからこそ、自然と笑顔になるのでしょう。
とはいえ、特に食べ放題でもやはり高級寿司や焼き肉の場合は誰もが「元を取ろう」という心理になり、恥も外聞もなく無我夢中で食べるということになり、とても幸せそうな顔というわけにはいかなくなります。
これを「損失回避」や「サンクコストの誤謬」で説明します。
行動経済学や心理学で多くの心理テストと呼ばれる実験が実施されました。
●具体例
(A)確実に1万円を貰える。(B)50%の確率で2万円を貰えるが、50%の確率で0円になる。どちらかの選択肢を迫られると、多くの人は(A)を選びます。中にはリスクをとって(B)を選ぶ人もいるかもしれません。(C)確実に1万円を失う。(D)50%の確率で2万円を失うが、50%の確率で0円になる。一方で、趣旨が利益から損失になると、多くの人は(D)を選びます。どちらも平均1万円を得るか失うかなのですが、1万円を得る喜びと、1万円を失う悲しみは同義ではないのです。少しでも「損をしない可能性」に賭けたいのです。似たような状況として「株の損切り」が考えられます。株価が下がっても、もしかしたらチャラになるかもと考えて売り出せず、余計に損失を被ってしまうのです。
このような実験から分かったことは、とにかく人間は「損をするのが大嫌い」ということのようです。
そのため、特に高級食べ放題などでは最初に結構高い参加料を払ってしまうと、「絶対に損はしたくない」という思いが強まり、「元を取ってやる」という気持ちになるのでしょう。
中には冷静に「食べるのは腹八分がちょうどいい」などと言う人も居ますが、そういう人はあまり食べ放題には行きません。
行ってかなり無理をして詰め込み、悪くすると後で体調を崩しても食べたという満足感に浸りたいのでしょう。
私は若い頃から小食というほどではないにしても、あまり多く食べるということができない体質でした。
周りの仲間たちが次々と口に流し込むように食べるのを呆れて見ているだけだったので、いまだに食べ放題という場所には進んで行く気にはなれません。
まあ自分のような人ばかりなら経済活性化というものも起きにくいのでしょう。