新聞社記者や編集者を経て大学教授も務めた山本さんが歴史の裏側というべきところを書き綴ったものです。
稗史(はいし)という言葉がありますが、正史というべき歴史観とは別に裏側から見たような噂話です。正史は時の権力者が綴ったもので、権威を持った歴史ですが、それが本当かどうかというのは疑わしいものです。実際は稗史の方に真実があるかもしれません。
古代史の場合はそのような稗史に属する記録も乏しいものです。正史以外はやはりほとんど消え去ってしまうのでしょう。最近調べなおしたものとしては、九州王朝論などがあります。正統派歴史学者からは無視されていますが、色々と説得力のある論旨が述べられており、山本さんも信頼性がおけるということで本書にも取り上げられています。
ただし、このような稗史の収集は基本的にその人の歴史観に捉われてしまいます。とくに近代以降はいろいろな史料がありますので、自分の好みの歴史観にそった資料だけを集めて読んでも結構な量になり、それが正しいかのような感覚にもなるでしょう。
近代の戦争に関する部分でも著者はそういった思い込みに囚われ、それにそった資料ばかりを読み込んでいるだけのようにも見えます。本を読むだけでは危ういということなんでしょう。